日刊 相模経済新聞
最新の相模経済新聞紙面から、厳選した記事をお届け致します。
10月15日 月曜日
[ 日中関係 ]
地域企業も動向注目
日本政府の尖閣諸島国有化をめぐって日中関係の悪化が続くなか、地域経済へのマイナス影響を懸念する声が出ている。国内事業の落ち込みをカバーしようと中国進出を決めていた企業の計画が白紙になったケースや今後の受注減を懸念する企業もある。関係改善に向け打開策の見えない両国だが、地域企業は今後の動向を注視している。(千葉 龍太)
受注減など懸念
超音波洗浄機を製造販売するブルースターR&D(相模原市中央区)。同社の柴野佳英顧問が上海を訪れたのは反日デモがピークだった9月中旬のことだ。
現地入りした目的は現地事務所を設立するための場所選びと、取引先となる中国企業との商談だった。
「日本人は戦争がしたいのか」 空港から乗ったタクシーで柴野顧問は早々に運転手から言われたという。国内では装置の市場規模が縮小するばかり。こうした中で、同社のような中小企業にとって中国は「引き合いが続く巨大なマーケット」(柴野顧問)のはずだった。
現地企業は連絡なし 進出白紙の企業も
だが、訪問先となる現地企業の社長に連絡しても返事がない。場所を探そうにもタクシーにも乗れない。結局、1社も訪問できず帰国することになった。
「展望が見えないので、中国はあきらめ、韓国にでも拠点をつくろうと思っている」と柴野顧問。海外進出の計画変更を余
儀なくされた。
プラスチック成形機の設計を手がける日本油機(同市中央区)は、現地に納入した製品のアフターサービスを延期させられたという。
一方、プリント基板加工の相模ピーシーアイ(同)の鈴木克人専務は「中国企業とは直接取引がないので、現在は影響ない」と肩をなでおろす。ただ「日系企業の現地生産が止まればおのずと影響が出てくる可能性はある」と警戒する。
「マイスポット」のブランドでテーブルスポット溶接機を製造販売する向洋技研(同)の甲斐美利社長は「(輸出する際、中国への)通関手続きが大変になる」とため息をつく。
中小企業による脱中国≠フ動きが加速するとの見方もある。相模原商工会議所の松岡康彦・工業部会副部会長(湘南デザインCEO)は「中国は市場も大きいがリスクも大きいこともよく分かった。今後は地域企業でもタイやインドネシアなど東南アジアへのシフトがますます進むのでは」とみている。
− 10月 10日号掲載記事より−
10月16日 火曜日
[ 総合建築の中島建設 ]
耐久性とデザイン両立の賃貸マンション完成
総合建築の中島建設(相模原市南区松が枝町)は9月末、耐久性を高めた賃貸のデザイナーズマンションを完成させた。
特殊なコンクリート技術を採用したことで、強度を通常の1.3倍にし、ひび割れにも強くしたのが特徴という。 賃貸住宅の経営を考えるオーナーに、高品質で永続性の高い建築を提案する。
「バルコン」と名づけた同社の賃貸マンションは、外観・内装ともに打ち放しコンクリートを多用するデザイン。
「スランプ12」と呼ばれる水分を減らしたコンクリートを用いた。 ただ、この原料は、流し込むときに詰まりやすく、空気抜きや保湿も通常と違う工程が必要なので、施工が難しいとされる。市内で取り扱うのは同社のみという。
建設費用は、坪単価で数千円ほど高くなるが、外壁の補修を減らせるなど、長期にわたって建物の価値を維持できるのも魅力という。
9月22、23日に開いた内覧会には、建て替えを考えるオーナーなどが訪れ、熱心に見学していた。場所は同社隣で、内覧会
終了後も1部屋をモデルルームとして使う予定。見学は同社に問い合わせる。
中島建設は近年、デザイン住宅にも力を入れており、同業他社との差別化を進めている。
問い合わせは同社 電話:042(733)7000。
高品質で永続性の高い建築を提案
− 10月 10日号掲載記事より−
10月17日 水曜日
[ バイオクロマト ]
「脱下請け」を伝授するコンサル事業を展開
分析機器を製造販売するバイオクロマト(藤沢市)は、自社製品を持ち脱下請け≠狙う相模原などの中小製造業を対象に、「モノの売り方支援サービス」を始める。
部品製造や加工業が主体だった同社が、いかにしてメーカーになって販路を築いたのか―。急成長する企業が、その手法を伝授するという。
同社は1983年に設立。もともとは半導体製造装置などに使われる器具の製造販売を主力としてきたが、2008年の米リーマンショックに見舞われる。
落ち込む売り上げを目の当たりにした木下一真社長は経営改革を決断。自社製品を開発し、脱下請けを進めた。
木下社長が目をつけたのが、購入しやすい消耗品。「揮発防止フィルム」を製品化した。製薬会社の研究者が試料の保管に使用するフィルムで、1枚180円程度。1日に50枚ほど使う研究員もいるという。
この戦略が奏功し、国内の大手製薬会社なら、ほとんどの企業に納入するまでに。木下社長は「営業のやり方にも手法がある」と強調する。
昨年9月には液体の成分を濃縮させる装置を商品化。薬品、食品、化粧品の開発現場で、試料の分析に用いられ、1台50万円以上するものの、取引先にはすでに消耗品を納入しており、信頼関係ができているため、販売は好調という。
今回、木下社長はこうした経験を体系化。メーカーへの脱皮を狙う中小企業に営業マニュアル作成からマーケティングなどを伝授するという。
「あくまでやり方を伝授するだけ。中小企業は厳しい状況にあるが、自分の経験を役立ててもらいたい」(木下社長)。
問い合わせは同社 電話:0466(23)8382まで。
− 10月 10日号掲載記事より−
10月18日 木曜日
[ 三光ホーム ]
市内初”断震”住宅
「地震で宙に浮く家」完成
地震が起こると瞬時に宙に浮く家―。制震でも免震でもない、「断震」と名付けられた工法の家が、相模原市内で初めて完成した。建設したのは同市南区にある三光ホーム(舟木久社長)。同社は昨年4月、この断震システムの開発元、日本エアー断震システム(茨城県土浦市)と代理店契約。今回が1棟目にあたり、相模原で唯一の代理店として販路開拓を進める。
(澤田 久美子)
全国で170棟採用
「断震」は阪神淡路大震災をきっかけに開発された。今では全国で170棟ほどが採用しているという。システムは、住宅基礎の下にコンクリート製の「地盤」をつくり、2層構造にしている。
地盤の震度計が震度5以上になると、層と層の隙間にタンクの圧縮空気が送り込まれ、基礎ごと住宅を持ち上げる仕組み。いわばエアークッションのような役割を果たす。
こうした作用により、住人には揺れが伝わりにくくなるという。
導入費用は約100平方bの木造2階建て住宅で500万円ほど。
今回公開された市内初断震住宅≠フ施主、杉浦清採さん(32)は「救急隊の仕事をしているので、震災が起きた場合、帰宅できない。妻子を守れる家にしたかった」と話した。同社の舟木社長は「まったく新しい発想の地震対策といえる。これから選択肢の一つとして顧客に提案していきたい」と意欲を示した。
問合せは同社 電話:042(766)3535。
− 10月 10日号掲載記事より−
10月19日 金曜日
[ コジマ技研工業 ]
串刺し機を海外に
焼き鳥やおでんなどの「自動串刺機」で、国内シェア9割を占めるコジマ技研工業(相模原市中央区)が海外展開を本格化する。
あらゆる食材を串刺しできる同製品が、串文化≠フあるアジアや日本食が定着しつつある欧州でニーズが出てきたためだ。自動串刺機はベルトコンベアに並んだトレーの型に合わせ食材を並べ、流れた先で串が刺される。 型はネギマ、つくね、ソーセージなど、数十種類。串も、爪楊枝ほどから、30センチ以上のバーベキューサイズまで対応できる。
引き合い多数で本格化
営業をしていない現在でも海外からの引き合いは増えており、今月は1台2千万円の機械を計20台チリに納品する予定。さらに、日本食への関心が高いフランスやドイツの市場も調査する。
タイでは現地で人気のスナックの製造に導入する企業もあるという。来年には米テキサス州で開かれる食品系の展示会にも出展する計画だ。海外でのニーズが増えてきたことに対して、同社の小嶋實社長は「省力化は世界共通のテーマなので」と説明する。
ちなみに、小嶋社長が串刺機を商品化し、本格販売に踏み切ったのは1980年代の半ば。競合メーカー数社も参入していたが、取引先となる当時の外食産業からは「串刺機は使い物にならない」とレッテルが張られていたという。だが、その後も地道な営業と製品改良を重ねて製品を普及させていった。今では国内市場をほぼ独占するまでに。「苦難があったからこそ、ここまでたどり着けた。今後は海外への売り込みを強化したい」と小嶋社長。人件費が上がるアジア各国や、日本食の定着で引き合いの増える欧州市場など、本社がある相模原から世界市場の開拓を見据えている。
問合せは同社 電話:042(755)7300。
主力の自動串刺し機=相模原市中央区のコジマ技研
− 10月 10日号掲載記事より−
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