日刊 相模経済新聞
最新の相模経済新聞紙面から、厳選した記事をお届け致します。
1月 7日 月曜日
[ 政権交代で地元産業界 ]
景気対策拡充求める
12月26日に発足し、経済再生を掲げる安倍新政権に対して、地元産業界からさまざまな注文が相次いでいる。昨年は地域の景気が本格回復せず、厳しい経営環境に置かれた中小企業だが経営者からは景気対策の一層の拡充を求める声が目立っている。 (千葉 龍太)
内需拡大、日中関係改善など 経済再生 期待大きく
「海外勢との競争が厳しくなるなかメードインジャパン″をいかに残していくか考えてほしい」と、マーク電子の村山忠雄社長は訴える。
相模原などの県央地域の産業をけん引する製造業。ただ、依然として続く受注単価の下落や大手製造業の海外シフトの影響で厳しい環境にさらされている。最大の関心事はやはり現実的な景気対策といえる。
湘南デザインの松岡康彦CEOは、「TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)への参加は産業界のためにも必要」とした上で、「内需拡大のため、橋梁や道路の補修など、やるべきことをやってほしい」と注文した。
日中関係の改善を求める声もある。
民間調査会社、帝国データバンク横浜支店が昨年11月に実施した特別調査によると、県内企業(調査対象は968社)の3社に1社が中国進出する日系企業からの受注減の影響を受け「業績に影響する」と回答した。
実際、大丸製作所の杉田豊範社長は「このまま関係の悪化が続けば、地域の企業にも影響が出てくる。早期の関係修復を」と話した。
民主党時代に決めた消費増税に対する意見もある。ユタカ精工の豊岡淳社長は「増税は理解できるが、景気が上向いてからでもよいのでは。もう少し議論してもらいたい」とした。
相模原商工会議所の河本洋次会頭は「経済は厳しい局面に置かれており、地域も疲弊している」と指摘。「デフレ脱却や円高の是正など、中小企業の活性化を柱とした景気回復につながる背策を早急に進めていただきたい」と要望した。
周辺都市の産業界も注視する。
横浜商工会議所の佐々木謙二会頭は「デフレと低成長からの脱却に向け、成長戦略の実現を」と求めた。
全国の業界団体では、日本自動車工業会の豊田章男会長(トヨタ自動車社長)が「国民や企業は厳しい環境のなか、ギリギリのところで懸命。こうした痛みを理解していただき努力した人が報われる社会にしていただきたい」とのコメントを発表している。
景気対策の充実を切望する中小製造業
− 1月 1日号掲載記事より−
1月 8日 火曜日
[ 業績悪化のパナソニック ]
市内取引先は161社
業績が悪化しているパナソニック(本社・大阪府門真市)およびパナソニックグループと取引関係がある企業(1次、2次仕入先)は相模原市内に161社あることが、東京商工リサーチ横浜支店の調べで分かった。大和市内では58社あった。地域で地域で具体的な取引企業数が分かったのは今回が初めて。
2013年3月期連結決算で大幅赤字を予想するパナソニックだが、今後の経営改善策次第では、地域経済にも大きな影響を及ぼすと同支店では見ている。
同支店によると、相模原、大和のパナソニック取引先計219社のうち、約8割は製造業。電子回路基板や通信機器、電子応用装置などの開発型の業種が目立っている。2次取引先では、産業機械販売業などの卸売業も高い割合を占めているという。
同支店は「相模原・大和の取引先企業は、先端技術を持つ半導体、通信技術関係が多くある。パナソニックが製品数や生産量などを減らした場合、売り上げ減につながる可能性もある」とした。
パナソニックは県内では、携帯電話事業を手掛けるパナソニックモバイルコミュニケーションズ(横浜市都筑区)本社や研究施設などを構えている。
同支店によると、神奈川県内全体での取引先企業数も2009社あり、全国でも東京、大阪についで3番目に多いという。
パナソニックは、13年3月期の連結最終損益の見通しを当初の500億円の黒字から、一転して7650億円の赤字見込みになると下方修正。携帯電話や電池事業などの不振から損失が膨らんだことや、のれん代など償却が発生し、12年3月期の7721億円の赤字に次ぐ、大幅赤字予想となり動向が注目されている。
− 1月 1日号掲載記事より−
1月 9日 水曜日
[ 向洋技研 ]
世界19カ国に納入
スポット溶接機需要増
向洋技研(相模原市中央区田名) のテーブルスポット溶接機「マイスポット」が海外市場から注目されている。
1988年に発売して以来、国内外でユーザー数を増やし、現在までに世界19カ国に納入した。最近では、ベラルーシやエストニアといった中東欧諸国からも引き合いがあり、製品を輸出したばかりという。
同社は10年ほど前からマイスポットの海外展開を開始。現在までに海外市場だけで累計300台を納めている。
現地を活用。現地の希望者を相模原の本社に呼び、製品のメンテナンス方法など、約1週間にわたる研修を実施している。その後は、正式に代理店契約を結び、販売を委託する。
甲斐美利社長いわく「代理店希望者のほとんどが英語版ホームページを見て連絡してくる」という。今後は会社全体の売上高に占める海外比率を高める方針だ。
国内市場では昨年10月に発売した「高速溶接技術」が好調という。
同技術は、鉄やアルミニウムなどの素材を瞬時にスポット溶接できるもので、すでに「マイスポット」に組み込み、新型機として出荷を始めている。
作業時間の短縮に加え、消費電力も従来比で3割以上抑えられるのも特徴。導入により、生産コストが抑えられるとして、引き合いが増加。3月までには、計画を上回る10台を販売できる見込みとしている。
世界19カ国で使われている溶接機
− 1月 1日号掲載記事より−
1月10日 木曜日
[ クロスメディア ]
「はやぶさ」採用 縫製技術 省エネに活用へ
相模原の町工場、本格展開
クロスメディア(相模原市緑区下九沢、佐藤捷秋社長)は、工場内の配管などに対し、特殊なカバーを巻きつけることで、熱の拡散を防ぎ、省エネ効果を実現する保温材「クロスジャケット」を開発した。同社は探査機「はやぶさ」で採用された断熱カバーを手掛ける町工場。宇宙分野でも採用された技術を、省エネ分野にも活用した。 (千葉 龍太)
3製品を開発
同社は宇部興産からの委託により、「はやぶさ」に使われているサーマルブランケット(表面の金色部分)を手掛ける。
配管などに使う同社の製品
特殊な素材のシートを数枚重ね合わせながら縫製する高い技術を持っている。今回の新製品はこうした技術を活用した。
開発したのは保温ジャケットで、「グラスコートカバー」「PVCコートカバー」「アルミコートカバー」の3種類。いずれもボイラーの配管などに用いる。
熱を送るボイラーなどの配管は、長くなればなるほど、熱が逃げてしまい、エネルギーを余分に使ってしまう。熱の拡散を防ぐため、従来は配管表面に巻かれた保温材(ガラス繊維製)の上をアルミテープで固定していた。
しかし、その場合はメンテナンスをする都度、テープをはがす必要があり、手間と時間がかかっていたという。
同社の「クロスジャケット」は、マジックファスナー付きで脱着が容易。保温効果があるので熱の放出を最大限抑制する。価格は1b2500円(グラスコートカバー)から。使用範囲はマイナス50度C~260度Cまで。
同社によると、市内にある大手電機メーカーの事業所で使ったところ、約2割の省エネ効果が確認できたとしている。
内照泰取締役は「経費節減のため省エネに取り組む企業が増えており、需要が期待できる。最低でも年間10万本の販売が見込める」と話していた。
問い合わせは、同社042(761)4181まで。
高い縫製技術を持つクロスメディアの工場
− 1月 10日号掲載記事より−
1月11日 金曜日
[ テクノフロンテ ]
職人技で治具改良 回収・修理で新事業
テクノフロンテ(相模原市中央区田名)は、研削加工などで用いられる治具の修理・改造事業を始めた。「精密バイス」と呼ばれる固定台が対象。長く使って劣化したものを、同社で引き取って修理するとともに、熟練職人の手で改良し、新品以上の精度にして戻す。
引き取った精密バイスは、平行度1000分の2_以下、垂直度1000分の5_以下にする。限りなくゼロに近づけるという。顧客にとっても、工場で使っている精密バイスが劣化しても、買い換えずに済むため、コストダウンにもつながるという。
同社によると、研削加工などで用いられる精密バイスは頻度によって異なるが、年数が経てば、垂直・平行度とも劣化してしまうという。加工したい素材を固定する台なので、劣化すれば、加工品の品質にも影響する。
同社はもともと、精密バイスを自社で修理していたが、こうしたノウハウを外販できないかと考え、新規事業として始めることにしたという。
修理・改良に当たっては、同社で研削加工を担当するキャリア約40年の熟練職人、富田光夫氏が担当する。改良には、平面研削盤を使用するが、「緻密な計算をした上で行うので、より精度を高められる」(富田氏)としている。
精密バイス1台につき、平均3万~5万円で修理・改良を受け付ける。同社の酒巻利光社長は、「精密バイスの新製品を購入する場合では、1台につき数十万円するので、経費節減にもつながる」と説明した。
こうした事業を行っている同業他社は少ないとみており、今後は営業活動を積極するという。初年度100万円の売り上げを目指している。
なお、テクノフロンテは研削加工と切削加工が主力事業。アルミやステンレスなどの非鉄金属の加工を得意としている。
「精密バイス」を職人が修理し改良
問い合わせは、同社042(762)7741。
− 1月 1日号掲載記事より−
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