スコーレ協会、日本家庭の再生に立つ/活動の輪広め創立周年


創立者の永池会長

創立者の永池会長

 公益社団法人スコーレ家庭教育振興協会(中央区淵野辺)が創立35周年を迎え、10月3日(土)に都内で記念大会を開催する。家庭の価値の見直しを提唱する生涯学習団体で、永池榮吉会長が80年に創設して以来、早朝研修、セミナー、機関誌の発行、生活カウンセリング、ボランティア募金活動などさまざまな活動を積み重ねている。「日本の教育と家庭の再生に立ち上がろう」と呼びかける永池さんの理念に共鳴する人たちの輪が広がり、現在は全国2万5千人の会員を擁している。その軌跡を追った。(編集委員・戸塚忠良/2015年9月20日号掲載)

■スコーレ設立

 創立者の永池さんは1939年北海道の生まれ。幼少年期を故郷の名寄で過ごした。人前に立つのは苦手だったが、中学生のとき生徒会役員の選挙演説をして「人前で話すことは人格を変える」と実感したのは貴重な体験だった。

 中央大に進学したころから社会的な問題への関心を深め、衆議院議員の秘書などを経験した。政治家を志していたが、ある社会教育者との出会いにより、社会教育の道に進むことになった。

 若い頃から痛感していたのは「日本の家庭がおかしくなっている」という社会状況。その思いを持ち続けた永池さんは「経済優先で倫理を見失った今の社会を再生させるには、家庭を立て直すことが必要不可欠」と考え80年、自らの考えを多くの人に語りかける決意を固め、国際スコーレ協会を設立し、何人もの協力者を集めた。

 スコーレという名称の由来について、「日本は敗戦によって、伝統的な家族道徳という国民のコンセンサスを失った。また、かつての国家神道が雲散霧消して宗教をもとにした教育はできなくなった。従って、日本の戦後教育は宗教観、倫理観をもたない個人主義になっている。これからの日本にふさわしい教育を確立するためには、ギリシャ語で学び・遊び・余暇を一語であらわすスコーレがいちばんいいと考えて会の名称にした」と語る。

■多彩な活動

 設立時から家庭教育セミナー、午前5時からの早朝研修、ボランティア活動などを活発に行い、 82年にはユニセフ「ハンド・イン・ハンド」街頭募金を開始。

 その後も母親講座や父親講座などの事業に着手したほか、会活動を紹介する機関誌をはじめとする出版活動も精力的に展開。

 89年には文部省主催の「第1回生涯学習フェスティバル」に参加した。

 ベルマーク収集活動には早くから力を入れ、2000年に集票点数全国1位と得票点数1500万点を達成し、2年後にベルマーク財団から感謝状を贈呈された。ユニセフ街頭募金活動にも積極的で、06年にはユニセフ本部から募金1500万円超の感謝状を贈られた。

 こうした活動を展開する中で会員数は年々増加した。協会は99年に法人化を果たし、09年には淵野辺に地下1階、地上5階のスコーレ会館を開設した。2014年に内閣府から公益社団法人の認定を受け、社会的な認知度を一層高めた。

■愛の実践で

 この間、永池会長はNHKテレビ・ラジオに出演したほか、国内、中国、韓国、台湾で家庭教育論を語った。

 セミナーや講演で永池会長が強調しているのは『共感』と『規範』の大切さだ。「共感とは愛の実践にほかならない。子供が悲しいときには一緒に悲しみ、うれしいときには一緒に喜んであげる。子供の心の動きに親が素直に共感する。そのような親の対応が積み重なって初めて親子の絆が作られる」と論じ、「親も自分を磨くことが必要。子供たちは軌範のある良好な家族関係の中で挨拶や食事の仕方などの基本的なマナーと、社会で良好な人間関係を築く資質を身につけていく」と説く。

 さらに、「物が絶対的に不足していた時代の家庭では、苦労している親の自己犠牲の愛に日々接していた子供たちの心に親孝行をしようという気持ちが芽生えた。しかし、個人主義の風潮が強まり、経済が成長して物が豊かになると日本人の家族意識は変わった」との認識を踏まえた上で、「日本の家庭を支えるバックボーンとして親への愛と感謝を倫理的なコンセンサスとすることによって、西欧の宗教的な感情に変わる真摯で敬虔な心情を共有することができるのではないか」と提言している。

■会員10万人へ

 現在の日常的な活動としては、首都圏、名古屋圏、関西、中国地区、北海道などの拠点で早朝研修のほか年間約800回の家庭教育講座・母親講座を開催している。テーマは家庭のあり方、親としての生き方、子供の育て方など。

 腹式呼吸による発声トレーニング、シニア世代の自己啓発をめざす集いのほか、不登校やいじめ家庭内暴力などの子供の問題から生活全般のトラブルに関する会員限定の生活カウンセリングもある。人材の育成にも力を入れており、各種の講座で講師役を務められる能力を持つ人たちを育て、これまでに20数人の講師が誕生した。

 今後もこうした活動を重ねつつ拠点を広げ、会員10万人を目指す考えだ。
10月3日に東京・中野サンプラザで開かれる35周年記念大会では坂東眞理子さん(昭和女子大学長)による記念講演、永池会長の講演などが行われる。盛大な催しになりそうだ。

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