何をするにせよ、とりあえずその日の天気は気になるもの。ITの進歩で最近の気象情報はかなり充実している。スマートフォンがあれば、刻一刻と変化する雨雲の動きをつぶさに確認しながら移動することもできる。
ただ雷となると少々厄介。広域の注意報ぐらいではピンと来ないし、雨雲情報だけで雷の発生状況を把握するのは困難だ。
そんな雷についての情報提供サービスで国内最先端を走る企業がフランクリン・ジャパン(相模原市中央区宮下、大川孝幸社長)である。
同社は1991年、避雷器や保安器など雷防御機器・設備の大手サンコーシャ(東京・品川区)の100%出資で設立。雷対策におけるソフト・ハード両部門を相互補完する形で分離独立させたと見ることもできるが、事業内容面では両者間には確たる一線が引かれているようだ。
端的に言えば、サンコーシャの雷防御対象が主としてインフラ関連施設や企業の設備・機器であるのに対し、同社では人命。このため提供する情報は過去の統計や広域にわたる漠然とした予報等ではなく、特定地域について即時性、精度の高いものだ。
同社の主力サービスである「ライトニングスコーププラス」は、雷情報を根幹に天気、降水、地震、台風など、各種気象・防災情報や、専属の気象予報士によるサポート等をパッケージし、インターネットあるいはCS回線で提供するもので、このほど相模原市トライアル発注認定製品にも選ばれた。
こと雷情報に関して同社が比類ないのは、国内で唯一無二、独自の全国雷観測ネットワーク(JLDN)を運用していることだ。
全国30か所に設置された雷の電磁波を捕捉する3種類のセンサーをGPSと組み合わせてネットワーク化。捕捉率90%以上、位置誤差500m以下の精度で落雷位置、時刻、電流値を観測し、発生15秒後には画面表示できる画期的なシステムで、これによりユーザー指定エリア周辺における雷の発生予報から発生現況、今後の予測までの細密情報をリアルタイムで提供している。
これらのサービスはパッケージ製品としての販売のほか、1日や1週間など期間・場所限定でのプランニング提供も行っており、音楽、スポーツ、祭等の各種屋外イベントで豊富な実績を持つ。
昨今、地球温暖化による異常気象がクローズアップされ、ゲリラ豪雨だけでなく、雷も増えているのではと感じている人も少なくないようだが、過去10年以上にわたる同社の観測データでその傾向は見られないという。
「落雷による死傷者は毎年数名から数10名。他の事故と比較して決して多いとは言えないが、人命はやはり重要。多くの人が集まり、屋外での活動も多いということで、今後はゴルフ場や企業だけでなく、学校への導入を積極的に働きかけていきたい」と大川社長は話している。
(編集委員・矢吹彰/2015年10月20日号掲載)