新たな輸送手段にエレベーター、民間が宇宙開発に新風/大林組がケーブルの耐久試験


宇宙エレ構図 宇宙と地上をエレベーター(EV)で繋ぎ、ロケットに次ぐ次世代の輸送手段にしようという動きが広がっている。宇宙開発は米露が先行しているが、日本の民間プロジェクトが新風を吹かせようとしている。

 2050年の完成を目指し開発を進めるのは、建設大手の大林組。13年4月に専門チームを立ち上げ、ケーブル開発などを進めている。

 同社が計画する宇宙エレベーター(EV)は、赤道上の島・海上と宇宙の静止衛星などをケーブルで結び、カゴ(昇降機)を上下させる。長さが約10万キロメートルのケーブルが必要とされ、鋼鉄の5分の1の軽さで、強度が20倍以上あるカーボンナノチューブ(筒状炭素分子)を使用する。

 宇宙と地上の間に「中間駅」を設置する。約4万キロメートルに静止軌道ステーションを置き、静止衛星の投入・回収、資源の処理などを行う。5万7千キロメートル地点と9万6千キロメートルは火星や木星、小惑星などへ向かう宇宙船への乗り換え駅となる。

 建設費は大林組の試算によると、リニア中央新幹線の東京~大阪(約9兆円)に匹敵する約10兆円がかかる。11年に退役したスペースシャトルで、1キログラムの物資を運ぶコストが約170万円かかるとされる。建設費は大きいが、運用コストは数十分の1程度で済む。

 大林組や大学などは08年、宇宙エレベーター協会を発足。神奈川大学や神奈川工科大学のほか、アニメ「機動戦士ガンダム」の原作・監督、富野由悠季氏も加盟している。

協会は5月28日、東京・水道橋の日本大学三崎町キャンパスで8回目の学会を開いた。大林組の石川洋二氏が、15年5月から国際宇宙ステーションで行っている「ケーブルの耐久実験」について説明した。

 ケーブルに適度な張力をかけるためには、年間4万トン燃料が必要になる。小惑星探査機「はやぶさ」と同じイオンエンジンでも6千トンを消費するため、「補給方法の検討が必要」(石川氏)という。
(2016年6月20日号掲載)

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