古橋裕一さん、参加型イベントで町を元気に/橋本商協組の若き理事長


熱意を見せる古橋理事長

熱意を見せる古橋理事長

 8月5日から7日まで3日間開催された「第65回橋本七夕まつり」は、34万人の人出でにぎわった。もともとは戦後の復興を目指して橋本駅周辺の商店経営者らが始めた行事で、まちと商店街との強い結び付きを物語っている。リニア新幹線の駅設置が話題になっている橋本だが、住民とともにまちづくりの土台を担うのは、設立51周年を迎えた橋本商店街協同組合だ。会員の増加、住民参加の多彩なイベントなどで元気いっぱいの商協組の事業を紹介するとともに、43歳と若い古橋裕一理事長に活動を支える理念を語ってもらった。
(編集委員・戸塚忠良/2016年8月20日号掲載)

■多彩な事業

 橋本駅周辺の商店が協力して橋本商店街協同組合を設立したのは1965年(昭和40)。市内で初めて法人化申請を果たした商協組だった。

 現在の橋本商協組のイベントは数多い。「商店街は社会資本。東日本大震災以降、そういう社会的認識が深まっている。商店街が地域の振興に努めることは当然の使命」と古橋理事長が強調する通り、ほとんどのイベントがまちづくりの性格を帯びている。

 毎年春と秋の2回市内の商店街が地域を一斉清掃する、さがみはらクリーン大作戦ではまちの美化を通じて来街者に心地よく買い物を楽しんでもらうため、商店街の会員らが汗を流す。

 市内最大の行事の一つである七夕まつりをずっと支え続けているのは言うまでもない。

 秋のハロウィンフェスティバルは2013年から始まった新しいイベント。子どもたちが店舗をまわって菓子をもらうスタンプラリー、仮装した大人にワンコインで飲食を楽しんでもらうハロウィンナイトを盛り込んでいる。地区内の神明大神宮の酉の市にも参加し、秋の夜を幻想的に彩るあんどんを設置している。

 消費者を巻き込むイベントも少なくない。その代表的な企画が「まちゼミ」。個店の経営者が自分の店の商品やサービスに関連する楽しい話を披露する少人数向けのミニ講座。

 今年は2月に30講座開催したが、そのタイトルは「長所を活かしたナチュラルメイクレッスン」「パソコンお悩み相談」「女性弁護士が語る離婚」「練り切り体験」など多種多様。経営者と住民との気軽な付き合いを深める場となっている。 

 冬の国際橋本ウィンターフェスティバルは09年から始まったフェスタで、和太鼓の演奏やダンスパフォーマンスなどの熱気が街を包む。13年からは語呂のいい「サンタ丸太」を盛り込んでいる。参加者に津久井産の間伐材にサンタクロースの絵を描いてもらい、街の中に展示する住民参加型イベントだ。

■若者との連携

 鉄道3線が交わる橋本駅を利用する学生、なかでも周辺の美術系大学に通う学生が多い。また、大学生主体の芸術活動拠点「アートラボはしもと」も立地している。これが下地になって、橋本をアートで盛り上げようという意欲を持つ学生たちが結成したグループ「さがっと」とタイアップして、商店経営者の似顔絵とプロフィール付きの商店街イラストマップなどを制作した。

 取材・撮影・執筆からイラスト、DTP制作まで学生が担当し、「学生の社会参加の機会にもなっていると思う」と古橋理事長。

 このほかにも若い世代に商店街への親しみを深めてもらう企画として、HASHIMOTO ART PROJECTがある。近隣の小中学生が制作した25センチ×25センチの美術作品を個店に展示する催しだ。

 その一方、若者の職場トレーニングのほか、ウツの人に簡単な作業体験を通して社会復帰を支援する活動も実施している。


■顔の見える関係

 11年に8代目理事長に就任して以来、次々に新しい事業を企画・実行している古橋理事長は田名出身。法大卒後、大手不動産販売会社勤務を経て、家業の相陽建設㈱(西橋本)に就職。32歳で3代目社長に就任した経歴を持つ。

 「橋本商協組の設立と発展は先人の努力のたまもの。それを受け継ぎ、次の世代に引き継ぐのが我々の役割」というのが理事長としての胸の底にある思いだ。

 「会員の店舗経営に役立つ情報を提供することも役員の役割だと考えている」という古橋氏は、全国商店街振興組合連合会の補助金や助成金事業の情報を会員に紹介し、活用を働きかけている。

 現在の会員は賛助会員も含めて137店。会員数は漸増傾向にある。橋本商協組の元気の源はどこにあるのか。「橋本で起業する若手経営者が増えているのと、経営者の世代交代が進んで商店街の大切さに着目する経営者が増えていることが要因。会員みんなが前を向いている」という。

 今後については「橋本には何でもある。ここでまちの活性化ができなければ、全国のどこで出来るんだ、というくらいの強い思いを持っている。大手ともスクラムを組んで商店街一体でまちを盛り上げたい」と意欲を語る。

 数多いコンビニが便利さ、スーパーが安さを売り物にする中で、住民は商店街に何を期待しているのか。市内屈指の歴史を持つ商店街の若きリーダーは「人のつながりだと思う。大事なのは、人と人をつなぐ顔の見える関係を築くこと、地域の人たちに忘れられない楽しい思い出を作ってもらうことだと思う」という言葉に力をこめる。

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