相模原市南区にキャンパスを置く宇宙航空研究開発機構(JAXA)はこのほど、東京都内でシンポジウムを開いた。航空・宇宙分野の開発に民間事業者が参画し、成果を地上技術に還元する取り組み「イノベーションハブ」を中心に意見交換が行われた。
(芹澤 康成/2016年8月20日号掲載)
奥村直樹理事長は、2020年に1号機を打ち上げる予定の「H3ロケット」について、「仕様検討の段階から民間活力を導入している」と説明した。
商用打ち上げサービスを見据えた取り組みで、打ち上げに必要な時間やコストを大幅に削減する狙い。打ち上げ後の運用も民間に委託する。
遠藤守副理事長は、NHKの室山哲也解説委員の対談の中で「リスクをシェアして、一緒に仕事をするプレーヤーを増やしたい」と話す。「宇宙産業の規模は国家予算より少し多いくらい。リスクを取ることで、大きく成長する“たね”を得られる」とし、民間企業や研究機関の参画を促した。
「イノベーションハブ~異文化交流から生まれるもの~」をテーマとしたパネルディスカッションでは、「ハブ」に参加するベンチャー企業や玩具メーカーなどを招き、意見交換を行った。
國中均宇宙探査イノベーションハブ長は「月や火星など重力がある環境で探査する技術は、地上の技術に親和性が高い。民生技術を吸収したい」と語る。
タカラトミー研究開発部の渡辺公貴専門部長は、自社の「アイソボット」を例に挙げ、低コストで多機能な製品を開発できる点をアピールした。
國中氏はこれに対し、「軽くて小さい探査機を複数台ばら蒔いたら、広域を観測できる。情報を交換しながら組織的に行動すれば、NASA方式ではない新しい宇宙探査ができる」と提案した。
今年度のイノベーションハブでは、15案件20社と共同研究を開始した。第2回、第3回と継続することで、ハブの構造を拡大していく。