八木茂雄さん、「防火・防災は市一体で」/防災協会理事長を8年


「防災意識を高めたい」と八木さん

「防災意識を高めたい」と八木さん

 全国どこでも「災害に強いまちづくり」は大きな課題。そのためには日ごろから市民の命と財産を守るための備えをしておくことが必要不可欠だ。9月4日に実施された相模原市総合防災訓練は、大地震が発生したときの迅速な対応に役立てるための訓練だが、市には年間を通じて災害防止と発生時の的確な対応を目標にして活動している団体がある。それが公益社団法人相模原市防災協会(八木繁雄理事長)だ。会員の講習や研修はもとより市民の防災意識の向上に向けたさまざまな取り組みを行っている。(編集委員・戸塚忠良/2016年9月10日号掲載)

■市一体の防災団体

 相模原市防災協会(略称・SDPA)は正会員19団体(901事業所)と賛助会員98事業所で構成している(16年5月1日現在)。会員は建設業からサービス業までの幅広い業界団体、相模原市、病院協会、農協、市立小・中学校会、高齢者福祉施設協議会などで、市民・事業所・行政一体の防災団体だ。

 前身の任意団体から1997年に法人化し、2012年に公益社団法人となった。「社会公共の安全及び福祉の向上」を活動の目的に掲げ、会員向け事業と一般向け事業を実施している。

各種事業のお膳立てや技術指導を担っているのは、専門的な技能も備えている8人の職員だ。

■会員向け事業

 会員向け事業は、毎年度4月の新入社員消防研修会から始まる。会員事業所の新入社員を対象に、消火器の取り扱い、煙体験、AEDの取り扱い方法、救急通報災害対応のカードゲームなどを体験してもらう催し。火災予防と救命活動の技術を習得することにより、事業所の防災体制の強化を図るのが目的だ。

 例年、「火災や地震が発生したとき、落ち着いて速やかに行動することの大切さを学んだ」といった感想を口にする人が多いという。

 年3回ほどの会員救命講習会では、参加者が実際に即した救命措置の習得に努める。このほかにも数多くの講習、研修を実施して、会員の防火・防災技術の向上に役立てている。

 秋の自衛消防隊消火競技会は、迅速な初期消火と通報、屋内消火栓の的確な操作などについて、会員事業所ごとに編成したチームが日頃の修練の成果を競う催し。毎年20チーム前後が参加しており、自衛消防隊員の意欲向上につながるイベントになっている。

■一般対象事業

 一方、一般を対象にした主な事業には、防火ポスターコンクール、社会福祉施設等防火実務研修会、防災講演会がある。

 ポスターコンは、秋季火災予防運動に合わせ、市内の小学生から防火ポスターを募る催し。優れた作品をポスターとして印刷し、会員事業所などに掲出する。昨年は市内52校から344点が寄せられ、32点が入賞。このうち最優秀作品1点がポスターになった。

 また、社会福祉施設などを対象にした防火実務研修会では施設の防災担当者が真剣に取り組む姿が見られ、市民への啓発活動として毎年、防災講演会を開いている。

 16年度の防災講演会は来年1月17日、東日本大震災で大きな被害を受けた大船渡市から講師を招いて杜のホールはしもとで開く予定だ。

■理事長の思い

 これらの事業のほかにも、一人暮らし高齢者の家庭を訪問して防火防災についてのアドバイスをしたり、市内の防災備蓄倉庫と広域避難場所を点検したりするなど、公益性の高い事業を幅広く行っており、八木繁雄理事長は「市民生活の安全を支えるための裏方を務めています」と話す。

 そして、協会のさまざまな事業は万一への実践的な備えと同時に、市民の防災意識を高めるねらいを持つことは言うまでもない。

 「火災を予防し、災害への備えをするのに、やり過ぎるということはありません。どんな事態も『想定外』で済ませてはならないのです」と力強く語る八木さんは、人命の確保という視点での協会活動の意義を次のように説明する。

 「実際に災害が発生した際にどうすればサバイバルの状態に耐えられるかを考え、そのための準備や訓練をしてほしいと呼びかける啓発の意味もあります。また、自分の横に倒れている人がいたらどう救助するか…。その方法、手順を体験しておくことはいざというときに役に立つことは間違いありません。災害は決して他人事ではないのです」

 その思いは「災害発生時のお互いの助け合いのためには、日頃のコミュニケーションが大切。気軽な声掛けを心がけたいですね」という言葉にもつながる。

 中央区矢部生まれで、市内で1960年代から続くガソリンスタンドを経営している八木さんだけに、地域住民のつながりを大事にしたいという言葉に強い思いがこもるのは当然だろう。

 協会は来年、法人化から20年目を迎える。その活動を支えているのは、「防火・防災はみんなのちから」という合言葉だ。

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