町田市中町に本社を置く、東京ガスライフバル澤井(澤井茂男社長)は相模原市内に2つの営業所を構えている。そのうち、南区を除く市内全域をサービスエリアにする相模原事業所(中央区向陽町)のトップを務める澤井宏行副社長(51)は、ユーザーへのスピード感ある対応により客層拡大に努め、同時に、社員との意思疎通を活発にしてやりがいを感じられる企業づくりに奮闘している。地域の産業振興に向けた社会的活動にも積極的だ。地域産業界の次代を担う気鋭の経営者を取材した。(編集委員・戸塚忠良/2017年1月10日号掲載)
■ライフバル澤井
東京ガスライフバル澤井は1987年、澤井茂男氏が町田市で創業。社屋はプレハブ小屋だったという。
創業以来、誠実な仕事ぶりが東京ガスから高く評価され、社業は拡大の一途をたどり、横浜市緑区、相模原市にもエリアを拡大した。
主な業務は、家庭用燃料電池や床暖房、太陽光発電をはじめとする環境に優しいガス機器や住宅設備機器の販売・施工・メンテナンスからリフォームまでのサービス全般。
ガス設備の安全点検、ガスの開栓・閉栓や検針、料金の支払い窓口サービス、給排水衛生設備及び空調設備のプランニング・施工・メンテナンスも行っている。
09年9月に完成した3階建ての本社新社屋の屋上には緑化が施され、世界に先駆けて日本で初めて発売されたエネファーム(家庭用燃料電池)が並んでいる。
『エネルギーソルーション企業』を掲げて業績を重ねる中、16年の電力自由化を追い風にして電気事業の拡充とエネファームの一層の普及に努めている。エネルギーと設備の一体的な提供だ。
■父親の背中
創業者の子息である澤井宏行さんは専門学校卒業後のバブル期に父親の会社に就職した。創業間もないころで、当時の茂男さんの昼夜にわたる働きぶりは目に焼き付いている。
「朝の5時半に起きて夜中まで働く父の姿を見て、経営の厳しさを知り、企業は人で成り立っているという思いを深くした」と回想し、「経営者としての父の後ろ姿を見ながら、何よりお客様を大切にすること、そしてお客様を大切にする社員を大切にすることが経営の基本だと考えるようになった」と加える。
現在、相模原事業所には68人の社員が所属し、7万件あまりの事業所と家庭へのサービスを担当している。「社員一人ひとりが大切にしているのは、お客様との濃密なつながり。法定点検のときなどにきめ細やかな対応を心がけているのはもちろん、迅速な駆け付けサービスにも精一杯の努力をしています」という。
設備の主力商品であるエネファームは、電力自由化に伴う東京ガスの電気事業への参入で注目度が高まっている。省エネ、電気料節約の効果が大きな特長で、エネルギー輸入国である日本にとって、都市ガスを活用して自前でエネルギーを調達できるのは画期的な機能。澤井さんは「エネルギー消費の削減、環境保全という国策に沿った商品」と強調する。
■地域活動
気さくな人柄のため、様々な団体から誘いがあり、これに応えて地域の経済人と積極的に交流している。
すでに卒業した町田青年会議所(JC)では理事長を務め、同世代との幅広い人脈を築いた。
現在は、町田商工会議所の3号議員を務め、産業政策委員長として、市の産業振興に向けた中長期ビジョンの策定に取り組んでいる。
また町田・相模原経済同友会では広報担当役員を務めており、市会議員との懇談会などを通して産業界の意見を伝えている。
地域活動に熱心なのは「地域の発展こそ自分を伸ばすことにつながる」という信条があるからだ。
■社員の一体感を
事業所の経営方針としては「社員の士気を高めることに努力している」と語る。この言葉通り、事業所の陣頭指揮をとることになった当初、社員のコミュニケーションを深めるために、七輪20個を庭に並べてバーベキューを楽しみ、生ビールのサーバーも設置して言いたいことを言い合う催しを開いた。
「いろいろな成功体験を披露しあうことでみんなの共通体験にできたし、やる気も高まったはず」と効果のほどを語る。
50歳という節目を迎えて、経営の世代交代が視野に入って来るのは当然だが、「父は社員20人の会社を約300人までに成長させた強いリーダー。人並はずれた厳しさと優しさを備えている。私は社員との両方向の意思疎通を大事にしたい。その考えから今、コーチングを学んでいる」と、自分なりの経営者像を模索している表情をのぞかせる。
そして、「社員一人ひとりが目標を達成する喜びを知ることは、お客様のために全力を尽くす喜びと仕事のやりがいを強めることに通じると思う」と、もう一度社員の技術と仕事ぶりへの信頼と期待を言葉に込め、「社員の一体感溢れる会社でありたい」と目標を熱く語る。