相模女子大学(相模原市南区文京)人間社会学部の後藤和宏講師はこのほど、九州大学理学研究院の伊藤功教授と共同研究で「脳神経回路が左右で違うことが、記憶の正常な働きには重要である」と明らかにした。脳のはたらきが左右で違うことの意義の解明に向けた一歩となる。
研究グループは、主要組織適合性複合体(MHC)と呼ばれる免疫タンパク質の一種「MHC―1」の脳内でのはたらきに注目し、この高度な分子識別機構が非対称な神経回路の形成においても重要であると考えた。MHC―1の機能を失わせた遺伝子改変マウスを用いて解析を行った結果、海馬神経回路の非対称性が完全に失われていることを確認した。
MHC―1は、免疫系の高度な分子識別能力に関連する役割を持つことが知られていた。近年、脳神経細胞にも発現していることが明らかになってきた。
脳は左右に分かれており、左半球は言語処理、右半球は空間情報や顔の認識に関与するなど、はたらきが異なる。役割の違いに関する詳しい仕組みは未解明の部分が多く、研究自体が非常に困難だと考えられていた。
脳神経回路の左右の違いが記憶という高次機能に関係することの具体的な手がかりが得られ、分子機構の解明がさらに進むことが期待される。意義が解明されれば、脳の左右差の異常によって発症する疾患とその治療方法なども発見できるようになるという。
(2017年2月10日号掲載)