光明学園相模原高等学校(南区当麻)は1919年、名僧の誉れ高い山﨑弁栄上人により「智慧と慈悲」を建学の精神として創設され、再来年100周年を迎える。現在の校長霧生正利校長(59)は相模原市橋本出身で、光明学園で教鞭をとって37年目になる。「建学の精神を大切にしながら、生徒一人ひとりが自分の目標を達成する学校づくりに教職員が一体になって取り組んでいます」と、歯切れのよい声で語る霧生校長に教育観と学園の現況を聞いた。(編集委員・戸塚忠良/2017年6月20日号掲載)
■新任体育教師
霧生校長は市立旭中で学ぶうち陸上競技への興味を深め、「体育の先生になりたい」という夢を抱いた。日大高校で学んだ後、日体大に進学。卒業と同時に光明学園に体育教師として就職し希望をかなえた。それ以来ずっと学園の生徒たちと共に過ごす日々を送っている。
新任当時は若い情熱を指導に注ぎ、ときには生徒とぶつかることもあった。
「自分が正しいと信じるやり方で生徒と向き合いました。授業に身を入れない生徒に厳しく接したこともあります。ただ、当時の生徒は、注意されるのは自分が悪いことをしているからだ、と自覚していました。だから気持ちの上で通じ合うものがあったと思います。今でも何かの折に連絡をくれたりするのは、私が若かった頃に本音をぶつけ合った教え子が多い」と懐かしさのにじむ声で語る。
■建学精神
学園の建学の精神である『智慧と慈悲をもって明るく、幸せな社会の実現に努める人間を育成する』という理念は、霧生校長自身の奉職以来変わることのない信条になっている。「生徒一人ひとりの心に智慧と慈悲の気持ちを涵養する心の教育を大切にしたいと考えています」という。
「学園の教育の特色の一つは、授業と昼食の前後に十念を唱えることです。手を合わせ心を込めて唱えることで建学の精神を受け継ぎ、礼儀を身に着けられると信じています。この習慣で培った礼儀正しさは、社会に出たとき必ず役に立つはずです。実際、卒業生への評価にもつながっており、保護者にも理解されています」
■3コース&部活
高校教育に時代の趨勢への対応が求められる中で、光明学園も変化を重ねている。基礎学力の向上を図り、生徒一人ひとりの個性と能力を生かすためカリキュラムの充実を重ね、計画的な進路指導や生活指導の充実にも努めている。
現在は、社会で通用する人間形成を目指して多彩なカリキュラムで学ぶ「総合コース」、全国でもまれなスポーツ専門の「体育科学コース」、大学現役合格を目指してきめこまやかに指導する「文理コース」の3コースを設けている。
総合コースには多くの選択科目を設けて生徒の多様な進路希望に対応しており、介護職員初任主研修課程などの資格取得が可能だ。体育科学コースでは授業の一環であるサイパンでの海洋実習に生徒たちが心を躍らせている。文理コースでは4年制大学への進学率が年々上昇しており、15年度は83%にまで達した。
クラブ活動が活発なのも大きな特色の一つで、なかでも、ロンドン五輪日本代表の深瀬菜月さんを出した新体操、わかやま国体優勝の出町さくらさんが所属した空手道、強豪校の評価が定着している男子ソフトボールはほぼ毎年インターハイに出場するほどの実力を備えている。
和太鼓部も市民になじみが深い。06年と11年の全国高等学校総合文化祭優勝という実績を誇る。
■環境整備
校舎のリニューアル、採光豊かな教室、冷暖房完備、ウォッシュレットトイレの導入など施設の充実にも力を注いでおり、創立100周年に向けた事業として今年5月、グラウンドを人工芝にする事業を完成させた。
霧生校長は「ほこりが立たず、活発に運動できるなど生徒にとっての利点は大きいですね」と効果のほどを語る。
現在の生徒数は約1500人。毎年の受験者数は2300人から2400人で、学園の経営は堅調に推移している。しかし少子化が進む中でどう生き残っていくかが最大の課題だ。
「1年生のときから3者面談を通じて行き届いた相談と指導に努めています。ほぼ半数の生徒が市内から通っていますので、市内の中学校との意思疎通を密にして、学園の運営状況などを懇切、ていねいに説明しています」と霧生校長。
「教育面での特色づくりと同時に、中学校への懇切、丁寧な説明をしていくことで信頼を得ていくことも校長の務めだと思います」と使命感を語る。
長身で今なお均整のとれた体格と若々しい話しぶりはスポーツマンの風貌そのまま。「さぞかし健康維持の運動を日課にしているのでは」と水を向けたが、「いや忙しくて、家庭菜園での野菜作りが精一杯です」と笑った。