船木春男さん、クリーニング業界の発展支える/時代に合う提案型経営貫く


社是は「存在価値のある行動力」

社是は「存在価値のある行動力」



クリーニング業界と共に歩んで40年あまり。店舗の設計・施工から業務用機械や資材の販売まで、トータルな業務を手掛けているアオイ(八王子市上柚木)。船木春男さん(50)はその二代目社長だ。創業者である義父の跡を継ぎ、顧客との共栄共存を社訓に掲げて提案型の営業に努めている。その一方、若い仲間と手を携えてクリーニング業界の活性化に向けた新たな団体を立ち上げる準備を進めており、「今は体力強化の時期。新たな価値を生み出していきたい」と力強く将来を展望する。(編集委員・戸塚忠良/2017年7月1日号掲載)

■妻の実家

1967年、東京・目黒に生まれた船木さんは北九州で育った後、東京国際大に進学。大手住宅メーカーの埼玉県の営業所に就職した。

「サラリーマンの家庭に育ったこともあり、経営者になりたいとは思っていなかった。会社に骨をうずめるという気持ちだった」という。

ところが、縁と言うべか、大学時代にローラーホッケーのサークルで知り合った女性と結婚したことで、サラリーマンから企業経営者への転身が待ち受けていた。妻の実家は、クリーニング業をトータルにサポートする会社で、妻の父親の永井軍治さんが、その創業社長だったのである。

義父から「会社の経営をやってみないか」と声を掛けられる一方、幼い頃から父親の苦労を身近で見て来た妻から「経営者になれば必ず苦労する。サラリーマンを続けて」と訴えられ、気持ちが揺れ動いた。

その迷いに決着をつけたのは、「サラリーマンは結局、大きな機械の一部。自分の代わりはいる。経営者として自分の可能性にかけてみよう」という思いだった。「今では妻が一番の理解者です」と話す。

■社長修業

28歳のとき転職した船木さんにとって、自社の仕事内容を一から十まで実際に経験して覚え込むことが最初の一歩だった。

アオイの業務内容は、大きく分けて製品販売とサービス提供の2つ。販売分野は消臭剤・ソフター・洗剤・ハンガーなどの資材・クリーニング機械などが主力。

サービス分野では、機械のメンテナンス、店舗や内外装の設計と施工。これに加え、個店への経営アドバイス、広告宣伝のサポート、従業員の接客指導まで、ソフト面での支援も行い、クリーニング店の業務に関することなら、ワンストップで対応できることが強みだ。今年で44期目となるアオイが蓄積したノウハウをベースに、お店繁栄の具体的な手法を提案している。

これらの仕事を経験した修業時代は、未来の経営者の大きな財産になった。「個人クリーニング店の経営者は職人気質の人が多い。だからこちらが少しでも気を抜いた仕事をすれば、次からは使ってもらえない。その反対に誠実な仕事をすれば長く付き合ってもらえる」という、心に深く刻んだ自戒の念もその一つだ。

■新団体設立も

今の商圏は八王子、三多摩など、車で1時間半圏内が中心。販売分野での売り上げ比率は商材8割、機械などが2割だ。機械に比べて商材の単価は低いもののリピート受注が多いため、経営を支える有力な要因になる。

このほかにも専門的知識を生かした独自商品の開発・販売も手がけ、洋服のリフォーム、しみ抜き、色掛けなどをテーマにした講習会も随時開催している。

最近、匂いの発生原因になる菌を分解してから自分自身も分解する消臭剤を発売。「匂いをマスキングするのではなく、元から抑える効果がある」と評価は上々だ。相模原市内の一部の焼き肉店などにも置いてある。

これも足掛かりにして船木さんは今、業界活性化に本気で取り組む若い仲間と手を携えて、「ジェニュインプレス協会」という名称の一般社団法人を立ち上げる準備を進めている。若い世代の仲間と業界を活性化させたいという思いからだ。

■提案型経営

他界した義父の跡を継いで社長に就任してから約6年。「人には気を遣い過ぎるくらいがちょうどいい」との遺訓を守り、10人の従業員、お客様を大切にする経営を心掛けている二代目社長は、「提案型」の業務方針を貫き、堅持している。

だが、経営環境は厳しい。業界の市場規模は1990年の8900億円をピークに減少が続き、現在はその半分を割ったと言われる。

そうした推移の中、アオイは設立から43年にわたり景気に大きく左右されることなく着実に業績を重ね、優良取引先の目標数を30社100店舗に設定し達成している。

今後について船木さんは「真面目に一生懸命やっている店舗を応援したい。業界にはまだまだ個人店が多く、機械のメンテナンス、商材販売、パート従業員の教育など、アオイへのニーズは決して減っていない。クリーニング業に真剣に取り組んでいる人たちを支え、共に繁栄する道を切り開いていきたい」という言葉に力をこめる。

 

 

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