相模原市弓道協会、武道館建設を熱望/競技実績と事業重ね半世紀


(左から)尾場瀬、衣笠、辻本さん

 (左から)尾場瀬、衣笠、辻本さん



引きしぼった弓から放たれた矢が空気をふるわせながら的を目指して一直線に飛んでゆく―。相模原市立体育館弓道場(中央区富士見)で毎日のように繰り広げられている光景だ。鍛錬に汗を流しているのは、相模原市弓道協会(髙木信行会長)のメンバー。市内3つの弓道場を拠点に活動している同協会は県大会、全国大会などで好成績を収める会員を輩出する一方、弓道振興に向けた普及事業も積み重ねている。会員の悲願は、武道館の建設と「遠的競技」に対応する弓道場の新設だ。(編集委員・戸塚忠良/2017年9月20号掲載)

■66年に発足

市弓道協会が発足したのは1966年3月。市立体育館弓道場のオープンと同じ年で、当初の会員は30人ほどだった。

弓道場は熱心な会員の鍛錬の場となり、協会は市民選手権大会を開催するなど順調に活動を広げ、メンバーの実力も向上。県総合体育大会で71年~73年、76年~79年に3連覇するなど華々しい戦績をあげた。

全国レベルでも、衣笠康子さん(現・協会顧問、70)が88年の国体成年女子の部で県代表チームの一員として優勝に貢献。2013年の全日本遠的選手権大会女子の部で望月久美さんが優勝している。

また、81年に市立総合体育館(南区)、91年には市立北総合体育館(緑区)にそれぞれ弓道場が設置され、現在に至っている。市内に3つの弓道場があるのは県内では相模原市だけという。

■様々な事業

協会は弓道の普及と競技人口の増加を目的にした事業も行っており、各弓道場で開催する「初心者教室」が代表例。今年度は市体育館では実施済みで、今後は北総合体育館で9月~11月の毎週土曜日午前、総合体育館で1月~3月の毎週土曜日夜、それぞれ10回シリーズで実施する。

元副会長の尾場瀬春志さん(76)は、「協会にとってとても大事な事業。各開催とも20人から30人ほどの参加者があり、半数近くの人が受講後も引き続き弓道に親しんでいます」と話す。

学校弓道の支援も大事な事業の一環。中央小、旭中、相模女子大高等部、県立相模原高、麻布大の弓道部に会員を派遣し、部活指導に貢献している。

このほか会員を対象にした講習会や月例会といった地道な活動も高く評価され、県弓道連盟の競技力優秀団体賞を3度受賞している。

■武道団体連絡協

市内の武道団体との連携も深まっている。94年に剣道、柔道、空手道、少林寺拳法、弓道の5団体で設立した市武道団体連絡協議会を拠点に、武道館の建設に向けた運動を展開し、市長をはじめ国、県、市の議会議員に武道館建設の意義と必要性を訴えるなどしている。

武道館建設に大きな期待を寄せるのは、弓道に特有の事情があるためだ。弓道競技には近的と遠的の2種目があり、近的競技は選手が28メートル先の直径36センチの的をめがけて矢を射る。遠的競技では60メートルの距離から直径1メートルの的をねらう。

市内の3つの弓道場はいずれも近的競技用で、遠的競技の練習はできない。このため、県内でただ一つの横浜市内の施設に足を運んで腕を磨くしかないが、横浜市民が優先されるなど相模原市民が希望通りに利用するのはむずかしいのが実情。

尾場瀬さんは、「会員の技術向上と弓道の普及促進のため、遠的弓道場の整備は全員の願い」と力をこめ、「武道館に遠的弓道場が整備されれば、アーチェリーとの交互利用もできる」と付け加える。

■健康な心身

現在の会員は約300人。男女ほぼ半々で、最高齢は88歳の女性。74歳のときから始めて5段の腕前になったという。

弓道への思いは各人各様と言えそうで、会員歴47年の衣笠さんは「弓道で大切なのは精神力と集中力。平常心で臨むことが重要ですが、平常心を持つこと自体が難しい」と、心の役割を強調する。

また、湘南地区大会で優勝実績を持つ辻本裕美副会長(63)は、「高校生のとき、はかま姿の弓道部員を見てカッコいいとあこがれたのがきっかけ」と弓道との出会いを笑顔で振り返り、「弓道着に着替えると気持ちが引き締まります」と語る。

メンバー一人ひとりが的に向かい合うときの凛とした立ち姿と、闊達な話しぶりは、伝統的な武道であり生涯スポーツでもある弓道への愛着が、心身の健康維持につながることを示している。

 

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