味の素やアジシオといえば家庭におなじみの調味料。その容器のキャップを製造しているのが東京ライト工業(東京都台東区、崎村孝社長)だ。戦後まもなく、プラスチック製容器のメーカーとして出発し、調味料、食品、化粧品、日用品などのキャップと容器の開発・製造で発展を重ねている。相模原市緑区根小屋に立地する相模原工場は開発・生産拠点の一つで、人々の暮らしに密着する製品を世の中に送り出している。相模原と半世紀余りのつながりを持つ同社の沿革を紹介する。
(編集委員・戸塚忠良/2018年4月20日号掲載)
■65年に相模原へ
東京ライト工業は1948年東京・神田で創業し、62年に会社設立を果たした。味の素のキャップの製造を柱に業務拡大を続け、65年新たな開発・製造拠点として相模原市西橋本に相模原工場を建設した。現在まで続く相模原とのつながりの端緒である。
味の素のほか、マヨネーズ、醤油、ソース、化粧品などの容器キャップに対する需要は増え続け、会社は増資に次ぐ増資を重ねた。創立40周年にあたる88年には資本金3200万円に達し、茨城県北茨城市に茨城工場を新設して量産拠点にするなど発展の一途をたどった。
■新製品開発
社業拡大と歩調を合わせて、消費者や取引先の要望に応えて技術開発を加速。成形の合理化、中栓・ネジキャップ組み込みの機械化、オンライン組み込み技術の確立、コンピュータ画像処理技術の確立などを進めた。
製品としては、フロンガスなどを用いず内容液を泡にして発出する画期的な容器や、従来の2ピースキャップをヒンジキャップに変更して使いやすくした新製品を開発。
また、容器からの油の漏出を防ぐ製品は1986年のJPC通産大臣賞を受賞。キャップのリサイクルを容易にする分離機能と反転ヒンジ機能を付けた製品は、01年日本パッケージングコンテスト「ジャパンスター賞」「日本商工会議所会頭賞」を受賞した。その後も含めて多くの特許技術を保有していることは言うまでもない。
■根小屋へ転出
03年、相模原工場を西橋本から緑区根小屋に新設、移転した。金原工業団地の一角を占める新工場の敷地は2000坪(6600㍍)。
現在の工場の主な設備は射出成形機23台、カラトロニクス混練機23台、組込ライン5ライン取出機、組込機、金型メンテナンス・工作室、エアシャワー室など。敷地内にバーコードによる入出庫・在庫管理システムの自動倉庫、副資材倉庫も完備している。従業員数は102人。
最近の周辺道路の整備と圏央道相模原インターの開設により、アクセスは格段に改善された。
06年には西橋本の旧相模原工場跡地に東京工場を設置した。会社は設備投資の増大に押されて一時は民事再生法の適用を受ける苦境に陥ったが、得意先でもある債権者企業の協力を得て従来通りの操業を続け、短期間で脱却。大和製罐の支援により資本金を9900万円に増資して現在に至っている。
11年には茨城工場内に第2工場を建設して増大する需要に対応する態勢を整えた。国際的な展示会への出展も続けており、16年には食品安全に関するISO22000の認証を取得した。
■人材確保に注力
相模原、茨城両工場の工場長を務める佐々木昌さんは、「需要は増えており、生産すれば売れる状態。得意先との共同開発も活発に行っている。従来の調味料、食品、化粧品、日用品のほかバイオマスキャップ、医療品の需要が高まると見込んでいる。小ロットでのニーズにも対応していきたい」と今後を展望する。
その一方、人手不足の悩みを抱えているという。人材を確保するため、外国人労働者の雇用にも積極的だ。「日本の大学を卒業したアジアの若者を正社員として雇用している。今春も3人が入社した」と話す。
「相模原工場ではインターンから製造、品質管理、検査・出荷作業、在庫管理まですべてを経験してもらえる。自分の企画した製品が社会の需要に対応しているという喜びも味わえる。やる気のある人にぜひ仲間になってほしい」と呼びかける。
プラスチックキャップ製造で国内トップクラスのシェアを誇る東京ライト工業。これからも市民の日常生活の快適さを高め、社会貢献にもつながる開発が続きそうだ。