ご自由にお弾き下さい―。商業施設を出入りする人なら誰でも自由に弾くことができるアップライトピアノが12月10日、相模原市緑区橋本の商業施設「ラ・フロール」にお目見えした。クリスマスや年末年始の街頭を賑わせようと、ことしから始めた取り組み。施設内から聞こえる美しい旋律に、師走の忙しさを少し忘れて耳を傾けていた。
ピアノは「音が良く響き、通りからも目が付くのでは」と、1階から3階までの吹き抜けがある中央入口に置いた。比較的オープンな場所で自由に弾ける楽器を置く例は市内でも珍しく、期間中の反応を見て延長や関連イベントの開催なども検討する。
同施設を所有する津久井製材ビルによると、買い物に来た主婦、施設内の学習塾やスポーツクラブに通う親子などが演奏している。多い時で1日20人以上が座り、クラシックの名曲を弾きこなしたり、鍵盤をたたいて音を出したりしていた。
通行人の耳を楽しませたのは、「同じ大学に通う同期生から教えてもらった」という路上演奏や動画投稿などで活動するブルックリンダウンタウンさん。故・尾崎豊さんの「I LOVE YOU(アイラブユー)」や「卒業」を弾き始めると、いつの間にかピアノの周囲に人だかりができていた。
ブルックリンダウンタウンさんは、365日ほぼ無休で活動しているといい、「キーボードを持ち歩くのは大変だから、こういう取り組み(ストリートピアノ)はありがたい」と話していた。
雨宮かつ美さんは「夕食のメニューを考えながら楽しい気持ちで演奏できた。みんなに聞いてもらえるとうれしい」と声を弾ませた。
「ストリートピアノ」や「駅(空港)ピアノ」などと呼ばれ、全国各地の駅や空港、高速道路のサービスエリアなどに置かれ、「だれでも自由に弾けるピアノ」として広がりつつある。欧州の駅や街頭などでは見慣れた光景で、通行人が足を止めては聴き入り、互いに感想を言い合うなどして交流が生まれる。
津久井製材ビルは「生活を楽しむための広場になり、人生に潤いを感じる場になればと願い、店頭にピアノを設置した。ピアノを通じて、音楽をもっと身近に感じてもらいたい」と話している。
設置期間は8日まで。施設内の店舗が営業している午前8時半から午後9時半まで演奏できる。
【2020年1月1日号】