三越伊勢丹、野村不動産と売買契約/相模原店跡地利用で不安の声も


相模原市は3日、2019年9月に営業を終了した伊勢丹相模原店(南区相模大野4)の土地建物について、野村不動産から三越伊勢丹との売買契約を同日に締結した旨の連絡があったと発表した。建物を解体しマンションの低層部に商業施設などが入る複合ビルの建設を検討しているが、賑わいの核となっていた市内唯一の百貨店の跡地利用だけに不安の声も聞こえ続けている。

両社の幹部が3日に市役所を訪問し、市幹部に契約締結を報告。市は相模大野のまちの広がりと人の回遊性を確保するために、三核構造の「商業・文化の核」を維持するよう求めている。

新たな建物の規模や機能などは未定で、野村不動産は住民から意見を聴取する場を設ける構え。店内通路が市文化会館(相模女子大学グリーンホール)など周辺の公共施設を結ぶ主要動線になっていることについても、新たな建物でも機能を維持する考え。

市によると、マンションとして採算性が合う建物を新築する場合は高層となり、建築基準法の日影規制の対象となる。周囲の居住環境を害するおそれがないと市の認め、さらに外部の有識者で構成する建築審査会の同意が得られれば建て替えできる。

野村不動産への売却が決まった伊勢丹相模原店=営業時撮影

野村不動産への売却が決まった伊勢丹相模原店=営業時撮影



伊勢丹相模原店は、1990年に開店し、93年にA・B館をオープン。ピーク時の96年度には、売上高が377億円まで拡大した。しかし、消費者の購買行動の変化や、同一地域内の競合環境が厳しくなったことで売上高が低下。2003年度以降、合計104億円の減損損失を計上するなど、赤字が恒常化し閉店を余儀なくされた。

駅前の商店街では伊勢丹相模原店の閉店について、「昨年秋から年末にかけて客足が戻りつつある。人の流れが変わり、駅前では活気が出てきている」との声もある。一部の飲食店では「正月のおせち料理の注文が増えた」との声もあった。

一方、野村不動産は13年3月に相模大野駅西側地区市街地再開発ビルに「bono(ボーノ)相模大野」を開業した。約180店が出店する商業施設と駐車場、タワーマンションを運営。当初計画していたシネコンが入らなかったり、テナントが定着しなかったりするため、地域の同社への不信感も残る。

市は本村賢太郎市長の「今後の跡地利用について具体的に市の思いや考えを伝えるとともに、地域の思いをしっかりと受け止めたうえで、相模大野のまちづくりに取り組んでいく」とのコメントを発表した。

【相模経済新聞2月10日号掲載】

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