横浜市の澤田智恵さん、音楽で医療従事者を応援/相模原の看護師2人がきっかけ作る


 新型コロナウイルス感染症の対応にあたる医療従事者を音楽で応援しようと、横浜市青葉区のヴァイオリニスト澤田智恵さんがオンラインでチャリティーコンサートを企画した。相模原市内で個人レッスンを受け持っており、市内の医療機関に務める看護師2人からの声が発端。インターネットで活動資金を募るクラウドファンディング(CF)「レディーフォー」で支援金を集め、収益を神奈川県などの基金に寄付する。

プロジェクトを発案した澤田さん

プロジェクトを発案した澤田さん



澤田さんは、ロシア国立グネーシン音楽院で学士・修士を取得し、パリのエコールノルマル音楽院でディプロマ(卒業証明書)も取得した。帰国後にウクライナ出身のヴァイオリン奏者オレグ・クリサ教授の出会ったことで同国の文化に感銘を受け、芸術などで日本との親交を深めようと日本ウクライナ芸術協会を設立した。

 演奏活動のかたわら、4~5年前からJR相模原駅ビルの音楽教室「スガナミ楽器相模原センター」で個人レッスンを受け持っている。その生徒の中に2人の看護師、相模原市内の医療機関に務める井上千明さん、総合相模更生病院訪問看護ステーションの相川絹代さんがいた。
 2人とは親交も深く、新型コロナウイルス感染が拡大した後、医療現場の過酷な環境や悪化する経営など、精神的、肉体的、経済的に困難な状況だという声を聞いた。一方、音楽家にとっても、国内外の公演が軒並み中止となり、対面レッスンも3月から5月まで自粛を余儀なくされていた。
 井上さんは「(新型コロナで)さまざまな医療物資が必要となったが、十分に足りていない。冬に向けても準備をしなければならない。音楽で医療現場を応援してもらい、とてもあたたかい気持ちになる」とコメントを寄せている。

世界的なヴァイオリニスト・クリサ教授

世界的なヴァイオリニスト・クリサ教授



支援先はウクライナと関りがある自治体として、神奈川県(かながわコロナ医療・福祉等応援基金)と京都府(府新型コロナウイルス感染症対策応援寄附金)を選んだ。また、ウクライナの医療従事者を支援しようと、医療機関に物資を配布している国際NGOアドラ・ウクライナにも寄付金を贈る予定。

 「緊張感と使命を持って第一線で働く人たちに微力ながら役立てることはないか」と、この企画を思い立った。澤田さんが住む横浜市と同国オデッサ市は姉妹都市だが、相模原市の看護師との縁で初めたプロジェクトということもあり、「県内全域の医療機関に支援が行きわたるように」と同基金への寄付を決めた。
 返礼となるコンサート映像はすでに収録済みで、9月末から動画配信サイトの専用アドレスから視聴できる。J・E・F・マスネの「タイスの瞑想曲」やS・ラフマニノフの「ヴォカリーズ」などの有名曲、ウクライナ人作曲家ミロスラフ・スコリクの作品など計8曲。「1人でも多くの人に音楽を聴いて、心を癒してもらいたい」と2曲を無料で公開している。
 出演者は澤田さんのほか、ピアニストのユリヤ・レヴさん、ゲストに朗読家の武松洋子さん。ウクライナの伝説的ヴァイオリニスト・オイストラフの弟子で世界的奏者のクリサ教授に加え、ウクライナ国立室内アンサンブル「キエフ・ソロイスツ」も特別ゲストとして参加している。
 また、クリサ教授らオイストラフの弟子6人のうち1人からヴァイオリンのレッスンを受けることができるコース(2万8000円)、澤田さんやクリサ教授の出張生演奏が盛り込まれたコースも用意している(30万円~)。
 支援者はCFの応募時に支援先を指定することも可能。目標金額は当初設定した50万をすでに超えているが、最終目標の3000万円に切り替えて支援を募っている。「オンライン決済が不安」「CFの手続きが分かりにくい」という人のために、銀行振り込みによる支援も受け付けている。
【2020年9月1日号掲載】

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