日本工学院八王子専門学校(八王子市片倉町)放送芸術科2年の8人は、8月2日に後楽園ホール(東京都文京区)で開かれるプロボクシング日本スーパーバンタム級(55・3㌔以下)王座防衛戦で試合の様子を撮影し、インターネットの動画投稿サイトで生配信する取り組みに協力する。コロナ禍でも興行収益を確保しようという取り組みを、産学とボクシングジムが連携して行う。
プロボクシングは昨今の新型コロナウイルス感染の拡大を受けて、厳しい客入れ制限を行っているため「収益は通常の半分程度」(ボクシング関係者)。タイトルマッチと異なりテレビ番組の放映権契約も少なく、相模原市内のジム関係者も「興行収入の大半を占めるチケットの販売減は死活問題」と話す。
今回の取り組みは、川崎新田ボクシングジム(川崎市多摩区)の新田会長の発案。当初、撮影から配信まで企業に任せる考えだったが、相模原市内で鍼灸院を経営し、同ジムのトレーナーも務めるトム岡川(本名・岡川智行)さんの提案で、母校の鍼灸科科長を通じて放送芸術科の石川祐貴科長に打診があった。
放送芸術科はカメラマンを育てる教育が目的。学生が担当するのは機材の扱いや撮影で、生配信はジムと同じ川崎市内にあるサウンドネットオフィス行う。同校の教員が機材について同社と打ち合わせし、月末までに学生を集めて配信機材のセッティングやカメラワークの練習をする予定。
格闘技専門のスポーツカメラマンを志望している渡辺翼さんは「とてもうれしくて、すぐにやりたいと思った。試合会場の熱気や臨場感を画面から伝わるような映像を撮影したい」と意気込む。
石川科長は「9月に中継業務を学ぶカリキュラムが組まれている。勉強する前にスポーツ中継の実践をするが、仕事を無事にできるか心配。実際の現場を経験できる機会は多くないので、この経験で得た成功体験や課題を今後に生かしてほしい」と話した。
コロナ禍による興行自粛要請が解けたばかりの8月、東京都内で行われたボクシング興行は、全6試合でタイトルマッチはなかった。「密」を避けるためチケットも一般販売されない試合で、前座ボクサーが日本王者クラスの報酬(従来の報酬10倍程度)を獲得できた事例もある。それが動画投稿サイトを使ったプロモーションと「投げ銭」だ。
今回の興行は動画投稿サイト「ツイキャス」を通じて視聴料3000円で配信する。コメント欄に「♯(ハッシュタグ)」と選手名を書き込むことで、その選手に投げ銭を贈ることができる仕組みも取り入れる。
プログラムは、現同級王者・古橋岳也選手(33)=川崎新田=のタイトル防衛戦など4試合。午後6時から試合を開始する。
【2021年7月10日号】