相模原市緑区在住のボクシングWBO(世界ボクシング機構)世界フライ級(50・8㌔以下)王者・中谷潤人選手(23)=M・Tボクシングジム=は11日(現地時間10日)、米国アリゾナ州で行われたタイトルマッチに4ラウンドTKO(テクニカルノックアウト)で勝ち、初のタイトル防衛戦に成功。現同級1位で、ライトフライ級元世界王者のアンヘル・アコスタ選手(30)=プエルトリコ=と戦いを制し、世界に「日本・相模原の中谷潤人、フライ級にあり」を印象付けた重要な一戦となった。
2020年11月にジーメル・マグラモ(フィリピン)を8回KOで下し、王座を獲得した中谷選手。当初は5月に日本で開催予定だったが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で延期され、会場が米国に変わった。
中学卒業後に単身渡米してルディ・エルナンデス氏の元で修行した中谷選手にとって、目標のひとつだった米国のリング。感染症の影響で大きな声援が規制された昨年の王座決定戦とは違い、観客席は盛り上がって立ち上がる人がいるほど熱を帯びていた。リングに立つ中谷選手も試合に集中しながら、その熱を肌に感じていたという。
アコスタ選手はKO率87%の強打が持ち味の選手で、近距離でKOを狙う。一方、中谷選手の身長は、アコスタ選手の163㌢に対し、フライ級では異例の171㌢。約8㌢の身長差から生まれるリーチを生かし、序盤は距離をとりながらジャブで様子を見た。
中谷選手は「軽量時から気持ちがあるいい選手だと感じ取っていた。日本と米国で積み上げたスパーリングの成果、ガードの位置のリード、左パンチなどを1ラウンドから集中して発揮できていた」と振り返る。
中谷選手自身も「印象に残る」と語るのも1ラウンド。左ストレートを主体に積極的に攻めると、顔面でもろに受けたアコスタが鼻血を出した。2ラウンド以降も中谷選手の攻勢でアコスタ選手の出血が止まらず。
3ラウンドではアコスタ選手が距離を詰めて近接戦に持ち込むも、中谷選手の左右アッパーで再び出血。4ラウンドの途中にレフェリーが試合の続行を不可能と判断した。アコスタ選手の鼻骨が骨折していたという。
プロとしては初の米国だが、渡米修行時のアマ時代にはメキシコを含めたリングに何度も上がっていた。日本でプロデビュー後も、試合の度に米国でのスパーリング・キャンプが恒例。今回も8月20日にロサンゼルスに入り、試合1週間前までの調整で12ラウンドのスパーリングを繰り返しこなしてきた。
中谷選手から「フックを貰わない意識、相手に勢いに乗らせない意識は集中していけた」「役に立った練習はすべて。すべての練習がこの様な結果をもたらしてくれたと思っていた」と自信に満ち溢れた返事が返ってきた。
中谷選手やジム関係者は試合翌日に帰国。2週間の待機期間は「ダメージを抜きながら、少しずつ体を動かしている」という。現WBC(世界ボクシング評議会)フライ級王者フリオ・セサール・マルティネス氏(26)=メキシコ=との統一戦(王座認定団体の垣根を超えたタイトル戦)を希望した。
M・Tジムの村野健マネージャーは「計量時のセレモニーや試合前の選手紹介でサガミハラ・カナガワ・ジャパンとアナウンスしてくれ、相模原市、ひいては神奈川県や日本を代表してリングに立っていると感無量だった」と語る。中谷選手の今後について、「本人と話し合って、できるだけ期間を空けずに次戦に臨みたい」と答えた。
【2021年10月1日号】