相模原出身の角田裕毅選手(20)が2021年シーズンからスクーデリア・アルファタウリ・ホンダ(イタリア)のレギュラードライバーとして、自動車レースの最高峰「FIA(世界自動車連盟)フォーミュラ・ワン世界選手権(F1)」に参戦する。同市からは名誉観光親善大使を務める片山右京氏が1992年から97年まで出場し、2人目の参戦となる。
角田選手は、モータースポーツの入門としては王道ともいえるカートを4歳から始め、2016年にホンダの若手ドライバー育成プログラムに入った。同年のFIA F4選手権にスポット参戦してデビューを果たし、17年から2年間フル参戦。18年にはシリーズチャンピオンを獲得した。
19年からは海外に活動拠点を移し、F1でホンダとパートナーを組むレッドブルレーシングのジュニアドライバーになった。FIA F3で好成績をおさめ、ことしからF1直下のカテゴリーFIA F2に挑戦した。
F1ドライバーになるためには「スーパーライセンス」が必要。FIAが定める国際レースや各国のレースに出場し、一定期間で一定数以上のポイントを獲得したドライバーにライセンスを与えるルール。角田選手は世界から若手ホープが集まる同シリーズで、この条件を満たすことができた。
ことしのF2では、タイトルを取ったミック・シューマッハ選手(ミハエル・シューマッハ氏の長男)とF1参戦を目指すライバルたちと競い合い、15ポイント差に迫る3位となった。
角田選手は「F2で3勝できたということもあるが、特に予選での走り。ポール(首位スタート)を4回取れたのがマルコさんに気に入ってもらえたと思う」と自己分析する。11月のバーレーン戦では予選でスピンを喫し最後尾グリッドとなったが、本戦では次々と前車をかわして6位入賞を果たした。切れ味抜群のオーバーテイクも持ち味だが、タイヤの摩耗などに配慮しながら走る「タイヤマネージメント」にも長けている。
アルファタウリは、2010~13年まで総合優勝、14年以降も上位を維持する強豪レッドブルが06年に組織したセカンドチーム(2軍)。若手をF1に引き上げる際、まず同チーム走らせることが通例となっている。上層部を納得させるようなパフォーマンスを示せれば、レッドブル(1軍)へ昇格できる。
来季のF2からの昇格組にはシューマッハ選手らがおり、今季ランキングがアルファタウリより下位だったハースからデビューする。今季の戦闘力やランキングからすれば、角田選手は恵まれた環境にいるとみられてしまう。角田選手自身、「相応の結果が出せないと、他のドライバーと変わらない」と厳しい現実を見極めているようだ。
マシンは、独自に開発したカーボン(炭素素材)・コンポジット・モノコック(張殻構造)のシャシー(車体)に、ホンダ製の排気量1600cc(コンパクトカー相当)Ⅴ型6気筒シングルターボエンジンとエネルギー回生システム(ERS)を搭載している。和製エンジンに邦人ドライバーという組み合わせという点でも、日本国内から注目されるオーダーかもしれない。
角田選手は、公開された動画で「F1での目標は、僕の夢がワールドチャンピオンなので、まずはその1年目としてしっかりチームに馴染んで、1つ、1つ、毎レース、毎レース成長していけるように、チームとともに一緒に頑張っていきたいなと思います」などと意気込みを語った。
F1って?
フォーミュラ1は、国際自動車連盟(FIA)が定める厳格な規格(レギュレーション)に全参加者と参加車両が準拠していないと出走が認められない「フォーミュラ」の中でも最高峰の自動車レース。日本では1976年から(78~86年を除く)富士スピードウェイ(静岡県)や鈴鹿サーキット(三重県)で日本グランプリ(GP)が開催されており、ホンダやトヨタなどの国内メーカーも参戦してきた。
参加できる車両は、シャシー(車体)、エンジン、タイヤなど、あらゆる部分に厳密なレギュレーション(規定)に基づいて製作された車。20年現在はカーボンファイバー(炭素繊維)製のシャシーに、エンジンとエネルギー回生システム(ERS)を組み合わせたパワーユニットが搭載されている。
排気量こそ1600ccとファミリーカー並みの大きさのエンジンだが、V6型ターボ加給で700~800馬力を発揮する。ERSによる補助も加えると、最大で970馬力から1000馬力を超えるとも言われている。日本のホンダをはじめ、高級スポーツカーで有名なフェラーリ(イタリア)、メルセデスベンツ(ドイツ)やBMW(同)、ルノー(フランス)が供給している。
過去にはホンダやトヨタなどがコンストラクターズ(チーム)として参戦。2社のほか、ホンダ系パーツメーカーの無限(現エムテック)、ヤマハなどがエンジンを供給していた。
今シーズンは全22戦が行われる予定だったが、コロナ禍の影響で日本GP(鈴鹿)を含む13戦が中止となった。オンラインとレーシングシミュレーターを組み合わせたバーチャルレースも開催されるなど、新たな試みも行われた。