第49回衆院選が19日に公示され、31日の投開票へ向け終盤戦を迎えている。選挙の主役はあくまで立候補者だが、選挙運営を陰で支える縁の下の力持ちがいる。それが「市区選挙管理委員会」だ。首相就任から10日後の解散と、解散から17日後の投開票はいずれも戦後過去最短となる。相模原市ではコロナ禍での初の選挙であり、異例の短期決戦なった国政選挙を運営する市区選管のさまざまな取り組みを取材した。
市選管では選挙のコロナ感染防止対策として、7月の東京都議選で隣接する東京・町田市選管に市職員を派遣し実際の業務に従事させた。「立候補予定者事前説明会から開票作業まで、延べ87人の職員が派遣され、コロナ禍での選挙運営を実際に体験した」(市選管)。
市選管では今回、具体的には投票所記載台の鉛筆を廃止。鉛筆の芯が先に付いたプラスチック製の「使い捨て鉛筆」を使用する。これは東京都議選、8月の横浜市長選でも同様の対応がとられた。さらに今回は、持参した鉛筆・シャーペンの使用を可能とした。
投票所には2ヵ所にアルコール消毒液を用意。入り口と出口の2ヵ所で手指の消毒を行う。またマスク着用やパーテーション設置、間隔をあけ距離を保つようにする。混雑時には、入場整理を行う場合もあるという。
■期日前投票も
市選管では、投票所の混雑緩和のため「期日前投票」を呼び掛けている。前回2017年の衆院選では、投票日が台風の予報だったため、期日前投票が増加。有権者が行列して、投票に時間が掛った経緯があった。
今回は期日前投票所を市内20カ所から駅前3カ所を増やした。南区は「ユニコムプラザさがみはら」、中央区は「相模原市民ギャラリー」、緑区は「橋本公民館」の駅直結の3カ所。市選管は「解散が決まり公示・投票日が決定するまで、会場確保や郵送物の印刷ができない。会場確保では、すでに市民の予約が入っていたが『選挙なら仕方がない』と予約をキャンセルして貰うなど、市民の温かい支援で期日前投票の会場を確保できた」と振り返る。
また今回は国の特例で、コロナ感染症で療養中の人は郵送投票ができる。郵送投票は通常、投票用紙の請求が必要だが、選挙期間中に宿泊療養や自宅療養の人には、市選管が制作した書類を市保健所から郵送する。
■自動交付と読取機
15年の統一地方選・南区市議選では、有効票1票の見落としで、最下位当選と次点落選が逆転した経緯がある。この時の票の再点検で、2票だった「持ち帰り票」がマイナス6票となった。持ち帰り票は、投票用紙を投票箱に入れずに「持ち帰った」とされる票。これがマイナスとは配布した投票用紙より、投票箱に入っていた票が6票多かったということだ。
全国の選挙でもまれに起こるが原因は不明。可能性としては、投票用紙を重ねて複数渡してしまったと考えられる。市選管ではこの教訓から19年の統一地方選から、投票用紙の「手渡し」を廃止。市は投票用紙の「自動交付機」を計594台保有する。これを市内133カ所の投票所に3台設置。3種類の選挙の投票用紙に対応する。
投票用紙は選挙ごと3色に分かれている。小選挙区選が「あさぎ色(薄い水色)」、比例選が「ピンク色」、最高裁の国民審査が「うぐいす色(薄い緑色)」となっている。
「投票用紙読取分類機」を市は6台保有。国民審査に使用される。他の2選挙は手作業で行われ、500枚の束にまとめられていく。有効か無効、案分票は人の目で行う。市区選管は「緊張感を持って臨む」とし、1360人の職員が作業にあたる。
開票作業は、緑区は「北総合体育館」で午後9時15分から。中央・南区は「さがみはらギオンアリーナ(市立総合体育館)」で午後9時から。
市選管では、市ホームページ内に特設ページを設けて速報を行う。投票速報は午前9時ごろから、開票速報は午後10時ごろからの予定だ。
市区選管のさまざまな試みを、投票所で確認して大切な1票を投じてほしい。
■岸浪市選管委員長「安心して投票所へ」
市選管の岸浪孝志委員長は相模経済新聞社の取材に、「衆院選は、国政の行方を決める重要な意義を持つ選挙であるとともに、このたびはコロナ禍の中、市として初めて実施する選挙になります。投票所では、出入口でのアルコールによる手指消毒や使い捨て鉛筆の導入、換気の実施など、コロナ感染防止対策を徹底して行います。有権者の皆さんには、安心して投票所へ足を運んでいただき、大切な1票を投じていただきたいと思っています」と有権者へ訴えた。
【2021年10月27日号掲載
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