スマート農業技術を活用した「根域制限栽培」システムによるフルーツの栽培に取り組んでいるGitobi合同会社はこのほど、2017年から行ってきた試験栽培を完了し、 相模原市、地権者と三者協定を締結し、農地を借りて根域制限栽培を本格的に開始。今後も連携を強化しながら、根域制限栽培のフルーツ農家への普及を促し、農業の高齢化をはじめとした社会課題の解決を目指す。
根域制限栽培とは、フルーツの木を地面に直接植える従来の栽培法と異なり、ポット(植木鉢)や盛り土にフルーツの樹を植え、水やりや肥料まきなどをより効率的に管理制御できる栽培法。 導入するメリットはフルーツの栽培を効率化できる点で、 従来の栽培法と比べて天候の影響を受けにくい手法であり、一定の品質を保ったフルーツを安定的に栽培することができる。
同社はこれまで100平方㍍の限られた土地で根域制限栽培の試験を行なってきたが、より本格的で大規模な栽培に移行するため、相模原市内に2000平方㍍の農地を借りて自社農園を開いた。年内から、ナシ、モモ、ブドウ、ポポー、アケビ、アンズ、ラズベリーなどの計14品種、200本の根域制限栽培を始める。
同社が開発した根域制限栽培システムは、18年に栃木県農業試験場で試験導入されるなど、現在までに3社に導入している。試験段階ではあるというが実運用の検証をできたため、ことしから自社農園にて本格稼働させる。
栽培方法は、20年11月に開催された関係閣僚会議で発表された「農林水産物・食品の輸出拡大実行戦略」にも組み入れられた。 フルーツの新たな産地育成の観点からも注目を集めているという。
同社代表でエンジニアの小野寺類氏は、11年に参加した千葉大農業・園芸技術者養成コースの職業訓練で根域制限栽培を体験。14年、農業分野への参入を目指して同社を創業した。16年には根域制限栽培システムの研究開発を開始。現在までに「スマートかん水装置」「スマート日射計」「スマート土壌水分計」という3つのIoTデバイスと、クラウド上で操作管理ができる「栽培管理システム」を開発し、根域制限栽培に適用している。
同社は「根域制限栽培システムに研究開発リソースを投じ、農業の高齢化や農業従事者の減少といった社会問題の解消、フルーツ栽培の品質安定化、そしてフルーツの美味しさの追求に取り組んでいく」としている。
【2021年11月10日号】