昨年12月に宇宙航空研究開発機構(JAXA)の小惑星探査機「はやぶさ2」が、小惑星リュウグウのサンプルを格納したカプセルを地球に帰還させてからちょうど1年となった6日、リュウグウから持ち帰った「サンプル」の一般公開が相模原市立博物館(中央区高根)で始まった。同日にオープニングセレモニーが開かれ、JAXA宇宙科学研究所(同)の國中均所長や同市の隠田展一副市長らが出席。サンプル展示ケースの除幕式などが行われた。
國中所長は「サンプルは現在、世界の科学者を動員した分析が着々と進んでおり、近々、科学成果をお知らせできると考えている。数㍉の石のかけらだが、『玉手箱』のような私たちが見たことも触ったことも考えたこともない情報量が詰まっている」と述べた。
「リターン」に成功した小惑星リュウグウの砂などのサンプルは昨年12月、同市にある宇宙科学研究所が受け入れた。その後、真空または高純度窒素のクリーンルームで大気などに汚染されないように開封、初期分析、保管作業などが行われた。
そして、ことし6月に研究チームにサンプルを配布。国内を代表する6人の研究者が世界中の研究者を束ねる6チームによって、テーマごとに分析が進められており、初期の太陽系において何が起きていたのかを明らかにしようとしている。また事前の協定により、サンプルの一部は米航空宇宙局(NASA)にも配布された。11月30日に米ジョンソン宇宙センターで引き渡した。
セレモニー後は、近隣の市立青葉小学校6年生の約50人が観覧。サンプル展示を観た児童は「見た目は小さな黒い砂だが、宇宙にあったと考えるとすごいことだと思う」と目を輝かせた。
セレモニーでは、帰還1周年を記念して、はやぶさ2や宇宙をイメージした市内店舗の「スイーツ」が、市マスコットキャラクター「さがみん」からJAXA関係者に手渡された。
サンプル公開は市主催で12日まで。事前予約が必要で、すでに定員に達し締め切っている。市によると、事前予約は北海道から宮崎県まで、全国から約3400人の応募があった。
同市の隠田副市長は「注目度の高さに改めて驚いている。はやぶさ2の故郷である市のシビックプライドの醸成やシティプロモーションに尽力いただいているJAXA関係者に感謝したい」と話した。
サンプル公開の事前予約は締め切っているが、市立博物館向かいの宇宙科学研究所「宇宙科学探査交流棟」の見学は11日以降、事前予約が不要となる。11、12日には構内にキッチンカーが出店。宇宙ステーションなどでトマトの育成を研究する「プラントライフシステムズ」(横浜市港北区)の「宇宙トマト」を使用した料理を楽しむことができる。
探査交流棟は宇宙科学に関する展示を行う施設で、宇宙を身近に感じてもらおうと2018年にオープンした。宇宙科学研究所によると、来場者アンケートで「近隣に飲食できる場所がない」という指摘が多く、また「宇宙トマト」の研究施設が同市緑区大島にあることから「地産地消」にもなるとして、構内でのキッチンカーの出店に繋がった。
【2021年12月10日号】