国や社会に功労のあった人に贈られる2021年秋の叙勲で、テーブルスポット溶接機製造の向洋技研(相模原市緑区橋本台)の甲斐美利社長が「旭日単光章」を受章した。甲斐社長は相模原商工会議所の常議員を22年以上、工業部会長を8年務めている。
受章について甲斐社長は「4畳半の事務所で、1人で始めた小さな会社から創業45年。身に余る光栄で感謝している。多くの人や地域に育てられ、章は社員全員でいただいたと思っている」と喜びを語った。
甲斐社長は宮崎県出身。工業高校を卒業後、地元に新設された本田技研工業の関連会社の工場に就職。創業者である本田宗一郎氏から「南九州の工業パイオニアとなれ」と薫とうを受けた。「仕事は自分で取ってきて自分で学ぶ」「30歳で定年するつもりで一人前になる」などの「ホンダ文化」の中で学び鍛えられた。
1976年に31歳で独立し、緑区下九沢で設計事務所を創業。87年からテーブルスポット溶接機の開発に着手し、現在では業界ナンバーワンの専門メーカーとして、国内のほか海外15カ国に納入実績を有する。
同社ではコロナ禍の影響で海外渡航ができなくなり、一旦は売り上げが3割減少したが、「コロナ禍が逆にチャンスになった」という。現在は展示会や設置までオンラインで可能となり、海外展示や出張費などの経費が削減され、ことしはコロナ前まで浮上を見込んでいる。甲斐社長は「これまでいかに無駄が多い商習慣だったかをコロナが突き付けた。時代が一気に加速した」と語る。
地元の製造業約800社の会員を有する工業部会長も務める甲斐社長は「オンラインで事業展開ができるようになり、大企業より変化に対応できる中小企業が世界で活躍する時代が来た。相模原には技術力を持った中小企業が集積し、若いエネルギーがある。コロナ禍に耐えて強い土壌ができた。チャンスの芽は出始めている」と力強く話した。
【2022年1月1日号】