主に相模原市内の小学生向けに理系教室を開いている市民グループ「理科で遊ぼう会」は、子供やその親、小学校教諭らを対象とした教育書籍を発行し、市内の全公立小学校や図書館、児童施設などに寄贈した。化学や物理の実験、草花や昆虫の観察など小学校の理科が内容。インターネット通販サイト「アマゾン」のプリント・オン・デマンド(POD)でのみ購入できる。1650円(送料・税込み)。【2022年2月10日号掲載
同会は2020年夏から21年3月ごろまでに小学校教諭向けの教材として「理科de(で)遊ぼう」をまとめたが、専門的な内容となったために難解な内容だった。同書をもとに教育の現場に立つ教諭の意見をくみ取り、子供やその親などでも親しみやすいよう写真や図解などを掲載。昨年12月に「子どもと大人のサイエンス レッツチャレンジ!」として発行した。
同会の田中皓さんは、現在の教育について「科目数が増える一方、教育現場には人・金・時間が不足している。必然と授業の準備にかける時間が減り、教育の内容が薄くなっている」と指摘。小学校教育について「知識は後からでも着いてくるが、深く考える力を養えるのは幼いうちだけ。柔軟な思考が個性を生む」と話す。
教材には現在の小学校教育でタブレット型端末を活用していることを踏まえ、読み取ることで出張授業や実験などの動画を閲覧できるQRコードを掲載。発電の仕組みを学ぶ回では城山ダム(緑区城山2)や城山ソーラーガーデン(同谷ケ原2)、などと、理科を身近に感じてもらおうと相模原市内の事例を紹介する工夫も凝らした。
同会は「理数系科目離れ」が課題となって久しい09年、北海道大学大学院で教鞭をとった田中さんが中心となって発足。相模原市内に住む教育機関の元職員やメーカーのエンジニア、主婦などがそれぞれのノウハウを生かし、小学校や公民館、環境情報センターなどに訪問し、無料で教室を開く活動を始めた。
20年の新型感染症の拡大後、教室を開く機会は7割程度に減少。緊急事態宣言の明けなど、感染者数が減少する時期を見計らって出張授業を開いていた。
田中さんは、同書のインターネット通販について「全国に販売することで、理科で遊ぼう会の活動を知ってもらい、同じような活動が広まれば」と期待している。