相模原市中央区内に事業所を構える昭和電線ホールディングス(SWCC、川崎市川崎区)はこのたび、仮想現実(VR)映像に実写映像を重ねる AVR(アドバンスド・バーチャル・リアリティー=拡張仮想空間)システムに関する特許技術とノウハウを保有するACW―DEEP(山口聡社長)を子会社とした。これを新たな足掛かりとし、同社グループでこれまで培ってきた技能やデータとDX(デジタル・トランスフォーメーション)に関する技術やツールを掛け合わせ、新しいビジネスモデルを創出する「SWCCスマートストリーム事業」を推進する。【2022年2月10日号掲載】
ACW―DEEPではVR技術の利用拡大を目指し、15年からAVR技術の本格開発を進めてきた。従業員数名の小規模な会社でありながら、国内唯一のAVRの特許は外部の表彰や認定を受けており、すでに企業の教育や訓練のためのシミュレーターで導入されるなどの実績もある。
今後、同社は昭和電線グループとして昭和電線ケーブルシステム(昭和電線CS)の相模原事業所(相模原市中央区南橋本4)内に拠点を置く。
2026年に創業90周年を迎える同グループは、膨大な材料データをはじめ、設計・製造技術やノウハウなどさまざまな財産を保有。新中期経営計画の成長戦略として、これらの保有財産とDXに関する技術やツールを掛け合わせ、従来の「製品」売りからデジタルツールを使った「コト」売りへの展開を目指す取り組みがスマートストリーム事業となる。
AVR技術は、頭部に装着するディスプレイに3D(3次元)立体視カメラを装着し、カメラで撮影した映像とコンピューターで生成されるVR映像を即時に合成する独自のシステム。拡張現実と仮想世界を重ね合わせて作成された視覚環境を生み出すことで、体験者自身がVR空間内に存在している感覚を実現し、現実に近い体験ができることが特徴。従来のVRと比べても、①3D酔いの軽減②危険の回避③操作性―といった点が改善されているという。
熟練技能者の高齢化や、若年労働力人口の減少が進む中、高電圧力ケーブル接続工事の技能を若年者に継承することなどを目的に、同グループは21年7月に「施工人財開発センター」を設立。AVRは工事現場などを再現した仮想空間内で実在の工具や安全器具を使い、より高い臨場感を持って反復的に訓練を行うことで、早期の技能習得を可能にすると期待する。
今後は(川崎市川崎区、昭和電線CS)が進めている高電圧電力ケーブル接続工事システム「サイコプラス」の人材教育プログラムへの導入をはじめ、SWCCスマートストリーム事業のさまざまな分野で、ACW―DEEPの持つノウハウと技術を展開していく。同事業の推進により新たな技術を活用したビジネスモデルを生み出すことで、新中計の目標達成、少子高齢化を背景とする労働者不足や技能継承、生産性向上といった課題の解決に役立たせたい考え。