相模原市は15日、相模湖総合事務所(緑区与瀬)で津久井・相模湖・藤野の3地域の持続可能な医療のあり方について、医療関係者や地域住民が意見交換を行う懇話会を開いた。2021年11月から12月までに実施した市民アンケートの結果を分析し、住民の声から課題の抽出を試みた。通院手段として自家用車に頼る人が多く、高齢化で医療機関の受診が困難になる人が増えている。IoTを活用したオンライン診療も提案されているが、情報通信機器の扱いなどに不安を感じる高齢者もいるなどの課題が浮き彫りとなった。【2022年3月10日号】
同アンケートは中山間地域の医療に関する意識やニーズを把握することが目的で、抽出した18歳以上の中山間地域在住者2千人を対象とした。980人(49%)の回答があったという。
市内の中山間地域では、通院手段の7割が自家用車によるもので、所要時間は平均で20分程度ということが分かった。在宅医療の充実について「必要だと思う」との回答が約95%を占め、そのうち約9割が「通院が困難または難しくなる」「高齢化が進行している」を理由とした。過去の高齢者等実態調査でも、移動することに困難を抱えている人がおり、在宅医療など「訪問」によるサービスの充実が求められている。
医療資源や財源の限界を迎えている市所管の6診療所(市立=青野原・千木良・藤野、国保=青根・内郷・日連)では、慢性疾患(高血圧、脂質異常症、糖尿病など)を診察することが多い。それぞれ医師1人、看護師2人(常勤・非常勤各1人)、医療事務員2人を配置するのが基本の体制。訪問診療は午後に1日最大3件程度、1件当たり30~40分程度の滞在。通院が困難な高齢者、精神疾患や脊椎損傷などで外出が困難な人への診療のほか、施設入居者などへの内服処方も行っている。
建設して50年を迎える施設(日連)もあり、建物や設備・機器に老朽化が進行。加えて、施設全体や敷地の一部が土砂災害計画区域に含まれる施設もある。今回のアンケートでも設備・機器の改善、施設の改修などを求める声があった。運営経費の面でも、市立(指定管理)・国保(市直営)の診療所のうち内郷以外の5診療所で、年間計974万円ほどの赤字となっており、約1億円の公費で補てんしている。
対応策としては、訪問診療やオンライン診療など、通院が困難な人へのサービス提供などを提案している。オンライン診療を「利用したくない」と答えた人は約47%となり、「PC(パソコン)等が使えない」「わからない」と高齢者などIT弱者への対応の課題も残る。
懇話会は学識経験者のほか、医療系団体、診療所、訪問看護ステーション、3地区のまちづくり会議の関係者ら12人で構成している。今後、アンケートの分析結果をもとに、市が運営する診療所のあり方、緊急診療体制や課題への対応策のアイデアなどを検討していく。