貸し衣装制作のアトリエヨシノ、公演や発表の機会失うバレリーナを支援/チャリティー公演で芸術継承へ


アトリエヨシノ 日本の舞台芸術から平和の声を―。バレエや舞台などの衣装制作・レンタルなどを手掛けるアトリエヨシノ(相模原市緑区与瀬)は、5月13日に東京都内で芸術継承チャリティー公演「バレエ・フォー・ピース」を開く。新型感染症のまん延や紛争などでバレエや舞台などの公演や発表、留学の機会が奪われ、夢や希望を絶たれつつあるバレエダンサーなどを支援する。入場料やグッズ販売の収益金を充てる方針だ。【2022年4月13日掲載】

同社副社長の大河原絢子さんは「特定の国や団体などではなく、芸術という分野そのものに手広く支援したかった。同情を誘うものではなく、芸術は公平・平等でだれもが楽しめるものであってほしい」と話す。

日本国内のバレエ人口は練習生やアマチュア、プロ(講師などを含む)を問わなければ30万人以上にも上ると言われている。「アスリート並みの過酷な訓練を小さい頃から積み重ね、その中から一握りの子だけがプロになれる。その一握りのプロでも舞台で踊って食べていけるダンサーが限られているのが国内の現状」という。

また、バレエ習う人は乳幼児から80代以上の幅広い年齢層。だが、ダンサーがベストな状態で踊れる時期は限られており、「情勢が落ち着くのを待ってからやるのでは遅い」(同社文化事業部)。

収益は昨今の情勢で職を失った、または渡航できなかったダンサーなどの一時就労支援や、踊る機会の創出などの財源として活用する見込み。大河原副社長は「会社としても資金を投じるつもりで検討してきたが、公演を企画したのは頭より先に体が動いた。一企業が財団をつくるのには信用や時間が必要で、一刻も早く動きたかった」と力を込める。

同社は全国のバレエ団や教室などと年間延べ18万着の衣装を取り引きしており、バレエや舞台に関わる情報が逐一入ってくる。さまざまな理由で舞台を降りたダンサーも受け入れている同社には「芸術を裏方で支えたい」という従業員も多い。大河原副社長は「バレエを諦めてほしくないが、バレエ一本が正義ではなく、いろいろなことを吸収することが人生で大切だということも伝えたい」と語る。

同社はダンサーに踊れる場を提供する機会を今後も継続して設けていく考え。大河原副社長は「特にバレエはこれまで、日本人が外に学びに行くばかりだった。世界から日本にバレエなどの芸術を学びに来る国にしたい」と抱負を語る。

バレエチラシ つながりのある国内外のバレエ団やアカデミーに声をかけ、公演の主旨に賛同した日本人や日本出身のダンサーが協力している。ウクライナのバレエ団「キエフオペラシアター」(キエフ音楽子供劇場)プリンシパルの長澤美絵さんをはじめ、昨今の情勢で外国から帰国せざるを得なかったダンサーら20人以上が出演する予定。それぞれがバレエの名場面をハイライトで演じる。

QR 公演は午後6時から新宿文化センター(新宿区新宿6)で開く。入場料は全席指定一律7千円。チケットはチケットペイ(https://www.ticketpay.jp)で販売している。

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