相模原市は4月26日、津久井総合事務所(緑区中野)で津久井・相模湖・藤野の3地域の持続可能な医療のあり方について、医療関係者や地域住民が意見交換を行う懇話会を開いた。事務局は訪問診療・在宅医療などの推進を提案しているが、医療関係の委員は「正確な診断が困難」などを理由に慎重な姿勢をみせる。最終回となる懇話会は来月24日に開く予定。【2022年5月20日号掲載】
地域住民からは「国民すべてが健康保険に加入できている一方、同じ負担で地域ごとに格差がある」との切実な声も聞こえている。
事務局はこれまでの検討を振り返り、課題を①高齢化の進行に伴う「通院困難」②医療資源や財源の限界③健康リスクへの対応(フレイル、慢性疾患など)―の3点にまとめた。課題への対応策として、オンラインを活用した訪問診療や在宅医療の推進などを例に挙げている。
中山間地域では高齢者の免許返納が進む一方、路線バスの便数減少など公共交通の利便性低下し、医療機関の受診などが困難になっている。
医師の委員は、在宅医療について「レントゲンなどの検査機器がない状況では正確な診断ができない。自身で健康管理ができれば医療機関に通う頻度も減り、医療費も抑えることができる」と指摘。「薬をきちんと飲めてない人が多い」ともいい、薬剤師が服薬指導時に血圧や脈拍などのバイタルサインを測定するなど他職間の連携も勧める。
市所管の6診療所(市立=青野原・千木良・藤野、国保=青根・内郷・日連)があり、そのうち日連診療所は築年数が50年ほど、青野原と藤野は30年以上が経過。また、内郷を除く5診療所では770万~3325万円ほどの赤字が出ている。3施設では一部または全体が土砂災害警戒区域に指定されていることもあり、地域内のニーズに対応できる診療所に機能を向上することも検討内容に盛り込んでいる。
地域でクリニックを経営する委員からは「電子カルテで患者情報が共有できれば、夜間診療を6診療所で当番制にすることも可能になるはず。在宅支援診療所などの認可を取得すれば、保険点数の加算も増えるので経営的なことを考えると電子カルテを導入してもいいのでは」とする意見もあった。
懇話会の中間報告を受けた医師会などからは「診療所の数を減らした中で集約した診療所に医師を複数配置し、(在宅医療の)ニーズに対応できる体制をつくった方がいいのでは」とする意見があったという。これについて、委員からは「修学医師が2人なら、1人が外来、もう1人が訪問診療に専念するなどフットワークの軽い医療を提供できるのでは」との提案もあった。
修学医師は「市から学資の貸与を受けて北里大学の医学部を卒業した医師」。現在、学年につき2人ずつ、計12人が制度を利用している。卒業後に市内の医療機関で貸付期間(3~6学年の4年間、1~6学年の6年間)の1・5倍の年数を勤務すると、貸付金の返還が免除される。