20周年のフォトシティさがみはら、写真賞に鎌田氏/アジア賞とともに先住民族がテーマ


本村市長から表彰を受ける鎌田氏と、新人賞の岸さん、中井さん(右)

本村市長から表彰を受ける鎌田氏と、新人賞の岸さん、中井さん(右)



20周年の節目となった相模原市の総合写真祭「フォトシティさがみはら(FCS)2022」のさがみはら写真賞など各賞の受賞者が決定し、9日に杜のホールはしもと(緑区橋本3)で表彰式が開かれた。国内プロの中堅写真家を対象とする「さがみはら写真賞」には、ノミネートされた作品の中から東京都の鎌田遵氏(50)=人類学者、亜細亜大准教授=の『大地と生きる―北米先住民族の矜持』(写真集)が選ばれた。【2022年10月13日号掲載】

実行委員会会長の本村賢太郎市長は、式典の冒頭で「写真という文化がさらに根付いて発展していくことを願っている。写真愛好家が市に集えるような環境作りに努めていく」とあいさつした。

『大地と生きる―北米先住民族の吟持』

『大地と生きる―北米先住民族の吟持』



同写真集は鎌田氏の4冊目の写真集。18歳で渡米して100以上の部族社会をまわってきた鎌田氏が出会い、過ごしてきた米国とカナダの先住民族の記録。現地の大学や研究機関に在籍する中、先住民と語らい、「誇り高く、大地に立っている人々」のありのままの日常生活や祭典などをカメラに収めてきた。

鎌田さんは「受賞を機に先住民や社会的マイノリティーの生活がより可視化され、直面している問題が改善されることを願う」と受賞した心境を語った。

審査員の伊藤俊治氏(東京芸術大教授)は「移民国家と先住民国家が複雑に入り組む様相に焦点が当てられている。人間とその土地を尊ぶ心の姿勢を、他者への尊敬と理解を示しながら明確に伝える写真集と言える」と評価した。

アジア地域で活躍している写真家を対象とした「さがみはら写真アジア賞」には、台湾の張詠捷(ジャン・ヨンジェ)さんの『泰雅族紋面長老(紋面のあるタイヤル族の長老シリーズ)』(写真集)』が受賞。「現在ではほとんど見かけることはない」(伊藤氏)という「紋面」(ウェンミン)と呼ばれる顔の入れ墨を持つタイヤアル族の長老たちの肖像写真を収めている。

伊藤氏は「祖先から代々受け継がれた伝統や風習を守り、人生を振り返りながら穏やかに先祖の時間へ浸ろうとする人々の瞬間を尊厳と沈黙を湛え写し出している」と説明する。

岸さん作品のコピー中井さん作品 新人写真家を対象とする「さがみはら写真新人奨励賞」には、千葉県出身の岸幸太さん(44)の『傷、見た目』(写真集)、滋賀県出身の中井菜央さん(同)の『雪の刻』(同)の2作品が選出された。

全国公募によるアマチュアの部「さがみはらアマチュア写真グランプリ」では応募者792人から3035点の作品が寄せられ、69人が受賞。金賞に馬場歩さん(埼玉県)の「moment」、銀賞に谷口哲也(和歌山県)の「祭りの子」と高橋一郎(大阪府)の「孫が来た日」が選ばれた。萩原由紀夫さん(相模原市)の「午後の公園」が市民奨励賞となった。

また、相模原橋本ロータリークラブが創設し、緑区を題材にした作品を対象とする「みどり賞」は、小俣政満さん(相模原市)の「限界集落」、小池久男さん(同)の「子どもの世界」、清水進さん(海老名市)の「レッドケーペット」の3人が受賞した。このほか銅賞3人、入選50人、ジュニア賞3人、ジュニア奨励賞6人。

審査員の大西みつぐ氏=写真家=は講評の中で、写真家を取り巻く情勢について「(応募者数・応募点数)それぞれ数が若干減っているのは、世界の動きが円滑になっていないことと決して無関係ではないだろう。この時代に写真を撮ることはどういうことか、アマチュアもプロも等しく真剣に考えるべき問題が山積みされている」と話した。

受賞作写真展は24日まで、JR相模原駅ビル4階の市民ギャラリー(同市中央区相模原)で開いている。プロ・アマチュアの受賞作品を展示する。午前10時~午後7時。水曜日休館。

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