ハギワラグループの中で産業廃棄物の処理などを手掛けるトキオ(相模原市中央区田名塩田)は2020年から、食品加工工場などで発生する野菜の切りくずなどの残さを農業用肥料の原料に加工し、協力会社で製造した堆肥を販売する事業に取り組んでいる。相模原市農業協同組合(市農協)などを通じて希望する農家などへの販売を行う。肥料をグループ内の農業生産法人ファームファクトリー(中央区田名)で利用し、生産した野菜を食品工場へ納入する「循環」の確立を目指す。【2023年1月20日号掲載】
トキオは1992年から、焼却処理施設として食品残さを含む産業廃棄物の処理に携わってきた。食品リサイクル法の改正で食品廃棄物を出す事業者からの要望が増加し、食品リサイクルへの関心も高まっていることから、食品残さの資源化を検討してきた。
田名塩田の本社近くに中間処理施設を整備し、2019年秋から市内のコンビニ向け惣菜工場やカット野菜工場からの食品残さを年間で2326㌧(21年実績)受け入れている。破砕と分別を自動で処理する装置にかけて不純物を取り除いた後、水分を搾り取ることで元の約15%程度まで脱水する。年間で約360㌧の原料を出荷できる態勢を整えた。
同社の原料を一部に使い、堆肥「かんとりースーパー川上」に加工するのはバイオテック川上堆肥センター(長野県)。「YM菌」という微生物の力を借りた発酵による生産方法で、発酵時に超高温となるため、「雑菌・病原菌・雑草の種子を死滅させて安全・安心」(同センター)との説明。同グループが自前で肥料製造の手続きや設備導入を行うと広大な敷地が必要となるため、長野と原料や製品を搬送する方が低コストだという。
食品残さの肥料化には、ロシアのウクライナ侵攻も背景にある。肥料の原料となる尿素が全国で値上がりし、特に輸入に頼る化学肥料の値上がりが目立っている。全国農業協同組合連合会(JA全農)は22年6~10月の地方への販売価格を、前期(2021年11月~22年5月)比で最大9割引き上げた。
「原料コストを抑えられ、土壌をよくするなど効果も期待できる」という、堆肥を使った肥料生産が注目されている。20年の法改正で肥料配合に関する規制が緩和され、届け出れば堆肥と化学肥料を配合した肥料をつくれるようになった。
ハギワラの内間正孝さんは「円安の影響で輸入に頼る食品の自給率を上げる動きが盛んだが、農業に必要な肥料が不足している」と話す。同社が原料を供給する発酵肥料について、「食品残さを発酵させて製造いるので、抗生物質や農薬などの残留リスクが少ない」とアピールする。
袋詰め堆肥(15㌔)での販売(店頭価格610円)が標準だが、計量によるバラ積み販売も可能。問い合わせは、トキオ042・778・3529へ。