在日米陸軍相模総合補給廠(相模原市中央区)一部返還地(約15㌶)を中心としたJR相模原駅北口地区の土地利用計画検討会議が2月24日に市役所本館(同区中央1)で開かれた。次年度以降の主な検討事項を整理し、課題や方向性について確認した。これまで検討してきた土地利用7ケースについて、市民意向調査や民間ヒアリングの結果をもとに代表ケースとしてまとめる。調査対象のいずれもが思い描く土地利用について「にぎわい」を想定する一方で、求める機能やイメージが一般、または団体ごとに異なるなど、具体的な土地利用の考え方を調査・検証していく方針だ。【2023年3月10日号掲載】
□利用検討を深度化
代表ケースは、市民や民間事業者の意向を踏まえつつ、機能導入のコンセプトの明確化を図るとともに、施設の具体的イメージについて検討。脱炭素の目標設定や交通処理を同時に進めながら、施設の用途や規模、配置、環境性能などについても考えていく。
市は今回、市民や地元・経済・子育ての各団体を対象に行った同調査結果や、民間事業者13社に行ったヒアリングなどの結果を反映し、7つの案で検討していたケース(全体像の検討モデル)を3案まで絞るよう提案した。ライフ重視では「ケース2」、イノベーション重視から「ケース3」、交流・にぎわい重視から「ケース7」を選択。相互に代替が可能な機能などは、今後の検討でも生かしていく考え。
ケース2は中層住宅を軸に、地域型ホールや商業、コワーキングスペースなどを組み込んだオフィスの配置を検討。CO2(二酸化炭素)排出量や交通負荷が比較的少ないが、ホールの魅力化・事業採算性の確保、商業施設の差別化、周辺教育施設等への影響対策などが課題となる。
研究開発やインキュベーション(創業支援)などを後押しする施設を核とするケース3は、大型商業施設やタワーマンションを配置する案。商業施設による交流人口が想定され、日常的なにぎわいを創出できると見込む。同駅南口地区などの商業地への配慮が必要となるほか、オフィス機能は橋本駅周辺などとの差別化が難しく供給過剰となる可能性が指摘される。
3案で唯一、スタジアム有の計画となるケース7は、スタジアムに商業施設や宿泊機能を複合化したものを地区の中央に配置し、日常的な賑わいの創出を狙う。ほかの2案と比べてCO2排出量や交通負荷が大きく、イベント開催時の騒音や振動などに加え、不特定多数の来街者による周辺住環境への影響を懸念。周辺商業地への配慮や事業採算性などの課題も指摘されている。
□にぎわい要望多く
意向調査では一般市民や各団体を問わず、いずれも半数以上の回答者が「にぎやかで活気のある街」を思い描いていることが分かった。賑わいへのイメージが「スポーツ、交流」「学術、研究活動・交流、コンベンション」「日常的、地域に根差した活動」「芸術文化活動、イベント」などと、市民や各団体によって異なっている。
一般市民(市街在住者含む)は、それぞれ4割前後の回答者が「商業施設、ショップ、飲食店のある街並み」や「スタジアムやホールのある街並み」を選んだ。一方、経済団体(相模原商工会議所)では商業施設などとともに「研究開発、オフィスのある街並み」が37・5%となったのに対し、スタジアムやホールは12・5%に留まった。
子育て団体(子育て親育ち応援団ウィズ)は、教育や文化に関連する施設、自然や緑のある街並みなど、暮らしやすさや生活の利便性を求める傾向が強かった。
全体の回答者数は340人(オープンハウス説明会やシンポジム参加者など含む)。現役の子育て世代である40代が27%ともっとも多く、30代も19%と50代(21%)に次いで多かった。次の時代を担う10代の回答数が1%(4人)に留まったことについて、委員から「若者から意見を聴く工夫が必要」などとの指摘もあった。
□23・24年度で策定へ
土地利用計画は23・24年度の2カ年での策定を想定。その後は土地利用検討会議に検討を移行し、市民意向把握や民間ヒアリングを継続して実施し、計画内容に反映しながら策定したい方針。