獣害対策を通して人と野生鳥獣との「共生」を考える場を作ろうと活動する「野生動物との共生の会」は2月26日、宮ケ瀬湖畔の市立宮ケ瀬ふれあいの館(緑区鳥屋)で、野生動物を捕獲する方法を学び、肉と皮革の活用を体験するワークショップを開いた。【2023年3月10日号掲載】
YouTube動画→ https://www.youtube.com/watch?v=vjm4Jby2gdU
参加者は事前に申し込んだ30人で、男性1人や夫婦、子供連れの家族などと多様。市内でも都市部の上溝や相模大野をはじめ、川崎市や茅ケ崎市などからも参加があった。シカの毛皮や枝角、ウリボウ(イノシシの子供)のはく製なども展示し、参加者以外の人も集まっていた。
猟師として活動する同会会長の竹内陶子さんと副会長の僚さんが、野生動物の現状や対策について説明。僚さんは、日本全国で年間何頭が捕獲されているか来場者に問題を出した後、「イノシシとシカがそれぞれ60万頭駆除されている。それだけ駆除しないと、人間社会と野生動物社会の均衡が保てない」と話した。
イノシシやシカは人里に下りてきて畑を荒らすことがあり、有害鳥獣に指定して捕殺によって頭数調整を行っている。肉は昨今のジビエブームで需要が徐々に高まりつつあるが、皮は捨てられることが多い。
陶子さんは、野生動物の毛や皮の特性や、日本の伝統的な使われ方などに触れながら、「なめしにコストがかかる。個体ごとに大きさが異なり、安定供給できないので大手メーカーは参入したがらないのでは」と説明する。
地元猟師の金澤睦司さんが、実際に使われている括り罠や箱罠を紹介した。場所を移し、同館近くの菱山喜章さんが所有する農地に設置された囲み罠を見学した。いずれも「罠猟」の免許が必要になるが、農家が自衛目的で設置するものには不要となる。参加者は熱心に質問するなど関心を高めていた。
昼には、竹内夫妻が2月に捕ったシカ(2月20日号、3月1日号掲載)の骨からだしをとったみそ汁「シカ汁」に舌鼓を打った。同会会員で、管理栄養士の今井敦子さんが調理したもので、菱山さんが作った津久井在来大豆の味噌、菊芋や野菜など、相模原産の食材をふんだんに使用。今回は参加者限定で振舞われたが、同館を訪れた観光客などからも、「食べられないか」との問い合わせが相次いだ。
試食した30代男性は「牛骨だしに似ているが癖がなく、豚骨や鶏ガラほど脂が強くない。地元野菜の甘みでまろやかでおいしかった」と話した。
陶子さんは、水源地域で各分野のエキスパートとして活動する「里の案内人」で、今回のイベントは県水源地域活性化・自然体験事業の補助を受けている。同会は市の協同事業にも、野生動物被害の実態や対策などを周知する事業として採択された。23年度当初予算に約74万円が計上され、今回と同様のイベントを行う予定だ。