北里大学は、相模原市南区の相模原キャンパス(北里1)に医学部と看護学部の新校舎に加え、23年4月に新設予定の「未来工学部」の校舎をそれぞれ建設する。建築工事はいずれも22年内に着手済みで、看護学部は2024年1月、未来工学部は同2月、医学部は同6月の完成を目指す。【2023年3月24日号掲載】
□初の工学系学部
新学部は、生命科学の総合大学として知られる同大学で8番目、初の工学系学部。学部内にデータサイセンス学科を設ける予定で、人工知能(AI)やビッグデータ、IoTなどの技術、知識を身に付け、データ解析やモデリングのアイディアを自らプログラムとして実装できる人材を育てる。
建設が始まっている新学部棟は、ビッグデータを解析するうえで欠かせない学部独自のサーバーを導入。スムーズに研究が進められるよう、実習授業用のパソコンルームなど、充実したIT環境を整えていく。初年度の入学生は既設校舎を利用する。
生物実験用の施設も新たに設け、データを自らの手で取得できるような体制も完備。細胞などを生きたまま観察できる「共焦点レーザ顕微鏡」や、ゲノム解析のための「次世代シークエンサー」、分子生物学実験のための最新設備も導入する。研究に使う施設だけにとどまらず、大きな「学生ラウンジ」を1階中央に配置。授業の合間にくつろいだり、コミュニケーションを楽しめるスペースとしても活用できる。
入学定員は100人。卒業後の進路は医療・製薬・食品をはじめ、公官庁や金融、各メーカーなど多様な分野を想定。学内にヘルスケア分野のベンチャーを誘致し、医工連携による共同研究を行う中で起業意欲を持つ学生の育成も狙う。
未来工学について、同大学は「まだ起きていない未来の課題をいち早く見出し、単に技術開発にとどまることなく、その技術を利用して複雑で広範な将来の社会課題に切り込んでいく学問」と説明している。
学部長に慶応大学理工学部の岡浩太郎教授を招へいする。北里研究所と慶応義塾は22年11月、両法人の特色とリソースを生かし、教育・研究・医療活動の充実と質の向上を目的とした包括的連携に関する協定を締結。教育・研究・医療をはじめ、「医農工連携」「産学連携」「人材交流・育成」「国際化」「情報基盤」など、多岐にわたる連携の強化を図る。
□2学部の新校舎も
医学部の新校舎は、医学部M1号館の北西側に、地上6階建てで建設する。現在、M1~M3号館に分散されている機能を集約し、講義室、研究室、教員の居室、事務室、コミュニティースペースなどを配置。17年8月に完成した臨床教育研究(IPE=多職種連携教育)棟にも隣接し、多様化・高度化する医学教育ニーズに対応する拠点とする。
看護学部の校舎建て替えは、創立35周年(21年)の記念事業の一環。現在の看護学部校舎N号館は、かつて北里看護専門学校が使用していた建物で、築40年が経過して老朽化が課題となっている。
新N号館は相模原キャンパスの西側で大学病院本館の北側の隣接地に建設し、地上5階建てとなる予定。医療の動向に則した教育ができるよう、領域ごとに実習室を設け、充分な広さを確保する。
隣接する実習室を連結できるようにし、必要に応じた柔軟な使い方が可能。学年の学生全員を収容できる大講義室を2つ設ける。
新校舎2棟は、病院本館やIPE棟などとの繋がりを考慮した計画。3階レベルの連絡通路で医療衛生学部A1号館やIPE棟、M5号館と接続、IPE棟を経由して大学病院本館と繋がる。新医学部棟とIPE棟との1階エントランスの間に、雨に濡れずに行き来できるひさしも設ける。
建物周辺には緑地空間を設け、自然環境に配慮。IPE棟と新看護学部棟と形成する中庭にはラウンジや講義室などの用途が多く面するため、中庭は緑あふれる空間とする。