今春で見納めの相模川シバザクラ/高齢化進み管理2団体解散=相模原市南区


4月上旬の某日、シバザクラが相模原市南区の相模川左岸の約1・4㌔に渡る土手、いわゆる「芝ざくらライン」で見ごろを迎えた。散策に訪れた人らの目を楽しませていたが、所々にススキやなどが生え、シバザクラの植生もまばらになっている。高齢化などを理由に新戸、下磯部の各管理団体が解散し、今年度冬頃をめどに原状回復工事が実施される。シバザクラの株も除去されるため、この春が最後のシーズンとなる。コロナ前までイベントに訪れる観光客などで賑わっていた河川敷の荒廃が懸念されている。【芹澤康成、2023年4月25日制作号掲載】

今春で見納めとなる相模川(新戸・下磯部)のシバザクラ

今春で見納めとなる相模川(新戸・下磯部)のシバザクラ



春の大型連休を目の前に控えた4月には、2019年まで15回続いた「相模川芝ざくらまつり」が開かれていた。東日本大震災があった11年には開催を自粛。同市にも新型コロナウイルスの感染が広がった20年から、来場者や関係者などの健康・安全に配慮して中止となっている。

荒廃の原因は、会員の高齢化と減少などによる管理2団体の解散だ。上流側の約550㍍を磯部地区は「相模川芝ざくら下磯部愛好会」、下流側の約850㍍を新戸地区は「新戸相模川芝ざくら保存会」がそれぞれ管理していた。年に7~10回程度の除草作業などを行ってきたが、「高齢者にとって斜面の作業は危険と判断した」(関係者)とする。

植生がまばらになっている新戸地区のシバザクラ

植生がまばらになっている新戸地区のシバザクラ



下磯部愛好会元会長の吉山茂利さん(81)は「大勢の市民や市外からも見に来るようになり、一つの観光資源として地域を盛り上げることができたのは励みになった」と話す。「下磯部には近くにトイレがなく、作業が大変だった」とするが、月1回の作業は交流の場にもなって「和やかな雰囲気だった」と振り返る。

21年春、地域情報紙に管理団体が解散の危機にある旨の記事が掲載されると、引き継ぎたいと手を挙げる人もいたという。しかし、年に7~10回ほど20人前後で行う除草や株の植え替えという話を聞くと、辞退してしまった。

相模川のシバザクラは、地元老人会や自治会などがごみの不法投棄や草木で荒れ果てていた河川敷を美化しようと、「かながわの花の名所100選」にも選ばれた渋田川がある伊勢原市から02年頃に苗を譲り受けたのが起源。市を介して県の河川専用許可を取得し、地元住民や企業などの協力もあって管理が始まった。

市からの除草業務委託として2団体が管理を受注している形だった。当時の市長が視察に訪れた際、「お茶代も出せずに困っている」と相談したところ、「それじゃ大変だ。担当課に対応させる」と快諾。吉山さんは「皆、孫らに小遣いを上げられると喜んでいた。活躍できる場ができて、地域の高齢者の生きがいのようなものだった」と語った。

管理の手が入らなくなった相模川には、それでもシバザクラは咲き続けていた。寿命は5年程度とされるが、下磯部では一部手入れを続けている個所もあって花を咲かせた株が多かった。占用許可の期限は年度いっぱいで、年度内に原状回復を行うため、鮮やかに彩られた堤防を見られるのは今春で最後になる見通し。

市水みどり環境課によると、原状回復工事では、渇水期(冬)にシバザクラや防草シートなど構造物をすべて除去し、表土固定のために芝生を植える。計上した予算額は3000万円弱。

防草シートが露出した堤防

防草シートが露出した堤防



「除草の実施やごみ不法投棄の監視強化などを求めている」(同課)とするが、吉山さんは「再び草木が茂るようになれば防犯や不法投棄が危惧される」と懸念を示す。シバザクラを植えるようになった以後も、夜間や人目に付きにくい場所では不法投棄が続いているという。

県が毎年実施している入込観光客調査では近年、10万人程度の客数を記録し、多い年では17万人が訪れていた。南区地域振興課では「予算の関係もあり、市が引き継ぐのは難しい」とする。

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