相模原市は4月28日、2022年度も南清掃工場(南区麻溝台)で焼却炉から貴金属を回収する取り組みを継続しており、金約6㌔、銀約10㌔を回収したことを発表した。売却益から回収費を差し引いた収入は総額1600万円となる見込み。初めて回収に成功した21年度に比べて4割程度に留まったが、今後も継続的に回収が可能であることが分かった。【2023年5月10日号掲載】
市は同工場を建設した神鋼環境ソリューションとともに、安定した回収方法や貴金属の取り出し方について調査・研究を行っていく。この技術を用いて白金(プラチナ)、パラジウム、銅といった他の種類の貴金属を回収するための技術開発も続けている。
21年度はそれまでの蓄積分を含めるため、金約15㌧と銀約16㌧で約3700万円となった。
同工場で採用している流動床式ガス溶融炉は、高温で流動する砂(約14㌧)を用いてごみをガス化し燃焼している。一般ごみとして廃棄された電子機器などに含まれる貴金属は、砂よりも重いことから、炉の底部に堆積した比重の重い砂の中で高濃縮された状態で回収することが可能。年間6回、休炉中に回収を行っている。
摂氏500〜550度と高温の砂を炉内に投入するごみに吹きつけ、高温のためガス化したごみを、さらに高温で燃焼する形式のごみ焼却炉。化石燃料を使用せず、少ない空気で効率よく、ごみを燃やせるのが特徴だ。
同温度帯ではガス化しない金属類が砂の中に残るため、これまでも資源回収性が高いことは知られていた。このため鉄やアルミの回収では実績がある。一方で電子部品に使われた後、廃棄されて埋もれる貴金属が「都市鉱山」と指摘される中、実際にどの程度回収できるか調査したのが今回だ。
一般的に、金鉱山から採掘される金鉱石の金の含有量は鉱石1㌧あたり約3~5㌘と言われる。一方、焼却炉の底の砂には1㌧あたり6㌔を超える金が含まれていた。
2022年のニュースの反響は相当大きく、全国の地方自治体やリサイクル業者などから問合せが相次いだという。現在、国内17カ所にある同社の流動床式ガス化溶融炉のうち、すでに5カ所で金や銀の回収事業が始まっている。
市は収入について、清掃工場や施設の修繕の費用に充てたい考え。同工場では「焼却炉の砂から貴金属を回収しているが、市民の皆さまがごみを分別することでより効率的な資源の回収が可能になる」と協力を呼び掛けている。