国内最大級の自動車技術展示会「人とくるまのテクノロジー展2023」(自動車技術会主催)が5月24日から3日間、パシフィコ横浜(横浜市西区)で、オンラインでは5月17日~6月7日開催された。自動運転や脱炭素、資源循環などに関わる最先端の技術や製品が集う中、県内で車体や部品を手掛ける各メーカーもブースを連ねた。【2023年6月1日号掲載】
自動車技術会の発表によると展示会は、国内の車体メーカー8社のほか、部品や制御システムなどを扱う国内外の企業が過去最多の約499社出展した。13件の世界初公開、21件の国内初公開の展示があった。欧米やアジアからも業界や報道機関の関係者が訪れ、来場者数も3日間合計で6万3810人が来場した(主催者発表)。
新型感染症の影響などで、22年からリアル展示会とオンライン展示会のハイブリッドで開いている同展示会だが、ITやAIという新しい分野の技術者、研究者のつながりの場となり、自動車業界の枠組みを広げることが狙い。
県内に本社や生産拠点を置く日産自動車(同)は、3月に発表した新開発電動パワートレーン「X―in―1」の試作ユニットを展示。20年度には全体で電動パワートレーン4機種と内燃機関45機種が存在したが、26年度には45%削減して計27機種まで、30年度はさらに電動パワートレーン3機種、内燃機関16機種まで絞り込む計画を進めている。
新ユニットにはBEV(バッテリー電気自動車)用としてインバーター、モーター、ギヤ(減速機)で構成する「3in1」、e―POWER用として3点に加えて発電機とギヤ(増幅機)からなる「5in1」の2種類を設定。パワートレーンコストを19年比で約3割削減し、e―POWER用では26年までにエンジン車と同等の車両コストを目指す。
導入の目的には、ユニットの小型化と軽量化によって車両の走行性能や音振性能を向上させること、重希土類(レアアース)の使用を重量比1%以下まで削減した新開発モーターを採用することなどを挙げている。
22年5月に横浜市西区のみなとみらい地区へ移転したばかりの「いすゞ(ず)自動車」も、3月にフルモデルチェンジした小型トラック「エルフ」を展示。AT車は従来、シングルクラッチの6速AMT(自動化した手動変速機)を搭載していたが、新型では9速DCT(デュアルクラッチトランスミッション)の「ISIM」に変更。エンジンの回転数を抑えて燃費を改善するほか、変速時の駆動力の途切れを大幅に少なくし、スムーズな加速を実現した。
エンジンと協調制御も進化している。変速時にエンジン回転を合わせ、特に上り坂で加速する場合などに駆動力の途切れが大幅に少なくなり、乗用車並みのスムーズさだとする。
関連会社を相模原市緑区大山町に置くスリーボンド(八王子市南大沢)は、EVのモーター部品や車体構造材の向けの接着剤のほか、植物や貝殻など生物資源を原料として使用したバイオマス接着剤も展示した。
同会の大津啓司会長(本田技術研究所社長)は、開会宣言で「今や避けては通れない地球規模の課題を乗り越え、持続可能な社会にしていくためには、競争と循環が鍵になると考えている。裾野が広く、社会に与える影響も大きい自動車産業において、カーボンニュートラルを実現するためには、ライフサイクル全体で脱炭素化をしていく必要がある」と話した。