簿記・経理を中心としたビジネス実務を学べる「神奈川経済専門学校」(相模原市緑区東橋本)は今月から、相模原ビジネス公務員専門学校の空き教室を利用して、多摩美術大学(八王子市鑓水)名誉教授の渡辺達正さんと版画家の崔恩知(チェ・ウンジ)さんが講師を務める銅版画の公開講座を始めた。現在は多摩美の公開講座から継続して参加している受講生が大部分だが、反響次第で日程の追加も検討する。【2023年6月12日号掲載】
「人数が多いと指導が行き届かない。少人数で内容をしっかり伝える」(渡辺さん)。今月開講したのは火曜日クラスと金曜クラスの2クラスで、定員は6人ずつ。受講生は週に1回、計5回通い、渡辺さんらの指導のもと1つの作品を仕上げる。
火曜クラスの初回は6日にあり、道具の使い方や手入れの仕方をはじめ、 版画に使う画材の扱い方やきれいな色を刷るためのコツなどの説明があった。
同専門学校は「相模原の街にアートを」という活動に共感し、東橋本の敷地内にギャラリーを設けるなど文化振興に取り組んでいる。3月末で閉館となった多摩美術大学美術館(多摩市落合1)からプレス機を譲り受けたのを機に、ギャラリーの作品展示などで協力のあった奥田理事長に引き取りと講座開講の打診があった。
奥田理事長は、経緯について「空き教室を活用して、市民活動や文化振興などに有効に使ってほしかった」と話す。
銅版画は無垢の銅板に、インクが乗りやすいよう無数の傷を入れる「目立て」と呼ばれる処理をした銅板を使う「メゾチント」という技法。彫刻刀で削ったりならしたりして絵を描き、インクを細かな刻みに擦り込んで刷る。削っていない部分はインクの色が濃く現れ、目立ちが削られたりならされたりした部分は白く浮き出る。木版画より緻密で繊細な明暗を表現できる。
銅板は金属の中でも粘りがあり、プレスにかける版画に向く。使用後も再利用できるため、一般的に版画に使われる木版画よりもエコという側面もある。
多摩美の講座を含めて10年近く続けているという男性は、自身で使いやすく加工したという彫刻刀などを持ち込む熱の入れ様。はがきサイズの銅板に刃を入れながら、「凝ってしまうと、思い描いた作品が作れるよう道具作りにまでこだわってしまう」と話した。
渡辺さんは「銅版画の特殊な技法を学びたい人はぜひ申し込みを」と呼び掛ける。受講料は2万円(材料費別途1万円)。問い合わせは、同専門学校へ。