相模原の中山間地域、各地区の診療所1カ所に集約方針/医師2人体制で診療効率化図る


相模原市は8、9日、緑区の中山間地域(津久井、相模湖、藤野の3地区)の医療のあり方に関する基本方針について住民説明会各地域で開いた。各地区に2施設ずつある診療所をそれぞれ1施設に統合し、1診療所医師2人体制とする方向性を示した。公共交通機関が少なく免許返納などで通院が困難な高齢者への対応として、訪問診療を効率的に実施できる体制を築きたい考え。【2023年7月23日号掲載】

青根会場で地域住民と意見を交わす本村市長=本紙記者撮影

青根会場で地域住民と意見を交わす本村市長=本紙記者撮影



9日、旧青根中学校体育館の説明会では、津久井地域の住民をはじめ、診療所を利用する人など約35人が参加。本村賢太郎市長や幹部職員も出席し、市民からの質問や意見に対応した。

津久井地区の国保青根診療所は、市立青野原診療所に統合。青根診療所は2024年度をめどに診療日数の見直しを行った上で、青野原診療所の分院として暫定的に維持する。医師の配置体制について「対面診療と訪問診療の組み合わせに留意しつつ各診療所に1人ずつ配置する」とした。

26年度をめどに相模湖地区の市立千木良診療所は国保内郷診療所、藤野地区の国保日連診療所は市立藤野診療所にそれぞれ統合する方針。医師の確保状況や施設の改修方法などにより、実施時期が変わる可能性がある。

市は「市所管の診療所を再編することにより生み出すことができる資源(医療資源・財源)やICT(情報通信技術)などを活用し、持続可能な医療提供体制を確保する」との方向性を示した。

現在、各診療所につき医師1人が勤務し、患者が診療所に通院するのが原則。診療時間中に往診を行う場合、1人体制では外来診療を休止しなければならない。再編後は2人体制とすることで外来診療時の待ち時間を解消できるほか、訪問診療やオンライン診療を組み合わせることで効率的かつ柔軟な対応が可能になると期待する。

内郷診療所を除く5診療所では、収支差額が約770万~3300万円のマイナスで計1億円程度の赤字となっている(20年)。本村市長は「厳しい数字だが、人口減少や赤字だから(再編するの)ではない。医療は命に関わる一番大事な心配ごとだと思うので、持続可能な医療体制をどうしたら構築できるか検討した結果だ」と力を込めた。

千木良と内郷の距離は約2・8㌔、日連と藤野は約1・3㌔だが、青根と青野原は約7・8㌔ある。通院困難者が増加するとの見通しを前提とした方針なだけに、青根診療所の利用者(2021年は約2200人)の不安は小さくない。

青根診療所の利用者からは「広域連携を模索しなければならない。診療所の経費負担を、県境をまたいでサポートしてもらうのは可能か」との声もあった。山梨県道志村から県境をまたいだ利用もあるとの指摘もあり、市は運営面や人材確保での連携の可能性の検討に前向きな姿勢を見せた。

3地区の人口はともに一貫して減少し、2045年には15年の6割程度になると試算。一方で、高齢化率は22年時点ですでに4割前後に迫り、高齢者人口と医療需要は25年にピークを迎えるとみている。

市は中山間地域における医療提供体制の確保を図るため、、地域の医療関係者や住民の代表者らによる懇話会を設置し、21年8月から22年6月までに6回の意見交換を重ねた。結果を踏まえて作成した基本方針案を市地域保健医療審議会が審議し、同年11月に市長に答申があった。

中山間地域では①高齢化の進行などに伴う「通院困難」への対応②医療従事者や施設などの安定的な確保・公費負担の適正化③生活習慣病などの重症化・フレイルの進行などリスクへの対応―が課題。基本方針では、在宅医療の充実や地域の医療・介護の連携、医療資源や財源の効率的な活用などの対応策を掲げる。

…続きはご購読の上、紙面でどうぞ。