オリンパス物流自動化の成功を学ぶ㊤/地域へのノウハウ還元で活性化狙う


相模原市とさがみはらロボット導入支援センター(事務局・さがみはら産業創造センター=SIC)は9月14日、自社工場や倉庫の自動化に関心がある製造・物流関係者を対象に、自動倉庫の導入に成功したオリンパス相模原物流センター(相模原市南区麻溝台1)の見学会・セミナーを開いた。物流では人手不足が叫ばれる中、参加した物流や自動化の担当者は業界の泣き所と言われる3つの課題を解決した秘けつを探った。オリンパスとしては、自治体や支援機関と連携して地元企業にノウハウを還元することで、地域経済の活性化に貢献したい考え。【2023年10月12日号掲載】

オリンパスの物流改革を成功に導いた原さん

オリンパスの物流改革を成功に導いた原さん



◇消耗品の売り上げ拡大へ

全国に4カ所ある物流センターのうち、東大阪と相模原は胃や腸などの消化器向けで世界シェア7割を誇る内視鏡や、ともに使用する処置具などの消耗品を医療機関に向けて出荷する。2016年3月に発表した中期経営計画では、インストールベース型から症例数ベース型へシフトする方針を打ち出した。

これは、これまでの内視鏡そのものの販売から、内視鏡の利用に伴う消耗品で売り上げを拡大する考え方だ。年率5~6%の売上高成長維持と、20%の営業利益率を求められたが、消耗品比率の拡大による多頻度・小ロット・短納期といった物流の課題が浮き彫りになった。

ロジスティクス&トランスポーテーション ディレクターの原英一さんが中心となり、倉庫の自動化による業務改革を目指すプロジェクトチームが18年度末に発足。体制の定義、メンバーの役割や責任範囲を明確にした上で、詳細な計画を作成してから開始。成功の秘けつについて「プロジェクトマネージメント。当たり前のことを当たり前にやる」(原さん)と強調する。

プロジェクトのキックオフは、中期経営計画の発表から3年近く後。この間、他社事例の調査・研究などを経て、自動化技術の取得からシステム全体像と効果の仮設立て(企画)を行うフェイズに充てた。原さんは「遠回りに見えるが、実際は一番の近道だった」と振り返る。

「自動化技術をどこまで有効できるか分からなかった」。チームで月に1回の研究会を開き、他社の事例や業界水準から客観的に実力を知ることから始まった。ここで重要なのが「うち(自社)は遅れているのではないか、という認識(健全な危機感)を醸成することだった」という。

企画立案から設備機器の選定、レイアウト、システム設計、移行までほぼすべてを自社リソースで完結しており、コンサルタントや外注は利用していない。構内物流業務の多くを委託しているロジスティードに任せるという手もあったが、「人の命に関わる医療機器を供給する責任を負っているからこそ、業務プロセスは自分たちの責任で構築するべき」(原さん)との思いがあった。

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