NFTルアーで釣果を電子的に証明/自治体や地域と連携したトークン化も模索


相模湖や津久井湖など相模原市や周辺の湖を拠点に活動するプロアングラー(釣り人)・古沢勝利さんは、ブロックチェーンやNFT(非代替性トークン)を活用し、釣果を電子証明として記録できるルアー(疑似餌)を企画・開発し、Web3(ウェブ・スリー)時代のルアーメーカーとして「ブロックチェーンルアーズ(BCL)」を立ち上げた。「品質の良い道具を作るのはメーカーとして当たり前。今後は楽しみ方を提案する流れになるはず」とし、考えを共有できる他のルアーメーカーや釣り具メーカーなどとのコラボの可能性も検討している。【2023年12月13日号掲載】

相模湖湖畔でウェブ3時代のルアーを開発する古沢さん=本紙記者撮影

相模湖湖畔でウェブ3時代のルアーを開発する古沢さん=本紙記者撮影



 □ルアーを実物資産に

ブロックチェーン技術の強みはデータを改ざんしにくく、信頼性が高いとされる。ルアーにNFTを活用することによって「いつ、どこで、だれが何センチのバスをどのルアーで釣ったのか」という記録が残り、アングラーの「信頼と熱量を可視化し、証明することができる」と説明する。

同社のルアー(2種類、各10色)には、唯一無二の個体識別番号が割り振られており、パッケージに記載される番号をブロックチェーンアプリ「BCLアプリ」で申請するとNFTが発行される。NFT化された釣果記録はルアーに紐づけて管理されるため、ブロックチェーンによって偽装・改変できない証明となる。

古沢さんは「購入後すぐに効果があるわけではなく、使い手によって成果も異なる。所有者にとって唯一無二の存在となり、一つのルアーに愛着が芽生えてくるはず」と熱を込める。

アプリには「釣りが好き」という同じ価値観を持つ人が集まる。自身の釣果映像やバスフィッシングに関する情報を国内に留まらず世界へアピールできる。同じルアーを用いるといった平等な条件下で、人種や性別、宗教、年齢という壁を越えて競うことが可能になる。

将来的には、NFT付きルアーなどを売り買いできるマーケットプレイスの導入なども計画している。本来は金融資産をブロックチェーン上で取引・管理できる投機目的の仕組みだが、「これまで価値の証明が難しかった釣り具をNFT化することで、証券や不動産のように現実資産として証明することができるようになる」と期待する。

□国内優勝経験のプロ

社長の古沢さん(56)=東京都杉並区出身=は、日本国内のバス釣りトーナメント最高峰JBワールドプロ(1999年河口湖戦優勝)で活動した後、スポーツフィッシングの本場・米国に渡って2002年から07年までFLWツアープロに参戦した。

現在は相模湖近くに住み、毎日(1200日以上継続)湖上に出て、釣り方や参加者との交流を目的としたオンラインサロンを開いている。ブロックチェーンやNFTの仕組みを知ったのはセミナー参加者の1人で、都内でコンテンツマーケティング事業などを手掛ける清水正さん(BSMOホールディングス)から。ルアーのNFT化やブロックチェーンの仕組みづくりは同社の力を借りている。

古沢さんが相模湖に移り住んで7年以上になるが、「難しいフィールド(釣り場)だが、東京から近くいい場所」ということもあってか当時に比べて釣り客は目算で倍以上に増加。「釣りに携わる身としてはうれしいが、釣り場の環境は釣り関連のメディアやインフルエンサーの発信では想像もつかないくらい悪化している」と表情を曇らせる。

地域の青年経営者団体などと連携した湖周辺の美化活動などもすでに行っておりボランティアや地域貢献活動に参加した記録もNFTとして記録される。相模原市や神奈川県をはじめ、湖などブラックバスの釣り場を持つ自治体との提携し、蓄積されたトークンを地域通貨などのように活用する案もある。

古沢さんは「釣りがあるから今があるという人も多い。100年後でもバスフィッシングができるようにすること」と語り、再び湖へ漕ぎ出していった。

 

今回のキーワード🔑

ブロックチェーン ネットワークに接続した端末を直接接続し、取引やデータ転送などの記録を暗号化して分散的に処理・保管する仕組み。「分散型台帳」とも呼ばれる。ネットワーク上にある複数の端末が互いに整合性を確認しながらデータを保存していくため、過去のデータを複製・改ざんすることは事実上不可能だという。

 

NFT 容易にコピーできてしまうデジタルデータにブロックチェーン技術を活用することで、電子的な鑑定書・所有証明書を付与して唯一無二な資産的価値を付与したもの。各作品の識別情報も踏まえて資産価値を与えるため、同じようなデータでも金銭的な価値は相対取引によって決まるケースが多くなる。ビットコインなどの暗号資産はFT(代替性トークン)という。

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