【JAXA】月極域探査機、25年度打ち上げへ計画/印米欧と連携し水資源調査


小型月着陸実証機SLIMによる月面への精密(ピンポイント)着陸を成功させた宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、2025年度に計画する「月極域探査機ルペックス(ルナ・ポーラー・エクスプロレーションの愛称)」の概要を発表した。インド宇宙研究機関(ISRO)とパートナーシップを結び、JAXAが探査車(ローバー)、ISROがローバーを運ぶ着陸機を担当。米航空宇宙局(NASA)や欧州宇宙機関(ESA)の観測機器をローバーに搭載する予定だ。【2024年4月10日号掲載】

月面の水を探査するローバー

月面の水を探査するローバー



ローバーは、月極域の高斜度にも対応できる高い走破性・登坂性がある4脚クローラー方式。高効率軽量な薄膜太陽電池タワーと超高エネルギー密度リチウムイオン電池による長時間の非日照領域観測や越夜を可能にした。太陽光パネルで電力を供給しながら、数カ月かけて10㌔以上を遠隔操作で移動する。

ルペックスは、月の水資源が将来の持続的な宇宙探査活動に利用可能か判断することが目的。ローバーが月面を指導しながら、搭載される観測装置によってさまざまなデータを取得。複数の地点でレゴリス(地表を覆う軟らかい堆積層)を採掘し、どの場所にどの程度の量の水が存在するのかを調べる。

プロジェクトチームで国際協力や着陸候補地の選定などを担当する井上博夏さんは「近年、さまざまな観測データの解析結果により、月極域に水があるのではないか、といわれるようになった。月極域とは、月の北極と南極の周辺のこと。この地域に水が見つかれば、将来月で人類が活動する際のエネルギー源として利用できるかもしれない」と説明する。

月極域の水は資源(推進燃料)としての利用可能性があり、水資源の情報は将来に見込む月を拠点とした宇宙探査に影響がある。また、水がどのような存在形態(液体、または個体=氷)であるかという情報も、本格的な月面利用に向けて重要な情報。探査機によって得られる重力天体の表面探査技術は、有人与圧ローバーや拠点建設など後続ミッションに向けて必要なノウハウとなると期待されている。

ローバー開発を担当する藤岡夏さんは「将来、月面における人類の持続的な活動の検討材料として役立てたいと考えている。月面の過酷な環境下でも作動するローバーや着陸機の技術獲得は、宇宙探査を進めていくうえでとても重要」と話す。

今回、ローバーに使うレゴリスの含水率を測る機器、掘削やサンプル採取をする機器のほか、走行系やバッテリーに至るまで世界初や世界最高水準の技術が採用されている。それらの機器を積んだ数百㌔㌘級のローバーを月に運び、走行し、掘削・採取、そのサンプルをその場で計測することは「挑戦的なプロジェクト」とする。

掘削採取した試料をその場で分析する装置

掘削採取した試料をその場で分析する装置



日本の新型主力ロケット「H3」で25年度に打ち上げる計画。南極域に着陸する予定。「この地域は水が存在する可能性が高いと言われているが、日照や通信条件が良好で、平らな着陸しやすい場所が限られている」とし、着陸地点が他国と重なる可能性があるため早期の表明を目指す。

月の極域では太陽高度が低いため、クレーターの内部などの周囲より低い場所に長い時間日の当たらない「永久影」と呼ばれる領域がある。これらの場所では、水が昇華せずに月表面近くに残っている可能性が高いことがこれまでの観測で分かってきた。しかし、水の具体的な量や分布、どのような形態で存在しているかはいまだ謎のままだ。

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