【相模原・八王子】日本のはり治療、米国研究者ががんのとう痛緩和に期待/相模原の鍼灸師や八王子の専門学校を視察


相模原市緑区で鍼灸院(しんきゅういん)を経営する岡川智行さんは、自律神経を刺激し体調の改善を図るという「鍼治療」を、がんの症状や治療の副作用による痛みや苦痛を抑える「緩和ケア」に役立たせる。自宅療養や日常生活を送りながら治療する人に提案する。がんそのものを治すことはできないが、がんによる痛みや、抗がん剤の副作用などを和らげ、QOL(生活の質)の改善に繋げることができるとされている。【2024年6月1日号】

ジェイクさんを囲む岡川さん㊧と安齋科長=日本工学院八王子専門学校

ジェイクさんを囲む岡川さん㊧と安齋科長=日本工学院八王子専門学校



香港大学の教授からの紹介で知り合った米国ルイジアナ州立大学で再生医療や生体工学などを研究するジェイク・フォンテンーさんが来日した。滞在期間(5月12~19日)に3回、相模原市城山地域や八王子市の日本工学院八王子専門学校を訪問。ジェイクさんは同校鍼灸科の安齋勉科長らと意見交換を行い、日本式の鍼(はり)療法についてアドバイスを受けた。

がんの患者には、痛みや倦怠感、食欲不振、抗がん剤治療に伴うしびれや不眠症、患部の摘出後に筋肉のこわばりなどがみられることもある。鍼治療など東洋医学には「本来人間が持っている自分自身で体の治す力を引き出す」(県立がんセンター)といい、苦痛の緩和に応用が期待され研究も進んでいる。

がんのステージ(進行状況)によって出血傾向やリンパ浮腫がある場合など、鍼の施術ができない場合もある。岡川さんは利用者から病状などを聞き取り、担当医に相談した上で治療を行う。

終末期のがん患者らを専門に受け入れる病院では実際に、緩和ケアの一つとして鍼灸を取り入れているケースもある。緩和ケアにおける東洋医学(鍼灸治療や漢方薬)の有用性について複数の大学や研究機関が検証しており、その中に35症例中7割程度に有効だったとする研究結果もある。がんの疼痛には強力な鎮痛効果があるとされるモルヒネ(麻薬)を投与することがあり、「著しく増量することなく鎮痛・緩和を期待することができる」(明治国際医療大鍼灸学部)という。

岡川さんの父も肝臓がんを患い、岡川さん自身が鍼治療で緩和ケアを行った経験を持つ。鍼灸師の国家資格を取得して1年後という当時を振り返り、「鎮痛剤を使わずに、痛みを訴えることはなかった」と語る。

抗がん剤治療を試みながら自宅療養、仕事をするがん患者も少なくない。2024年3月から50歳まで就業機会を確保する努力義務が定められ、今後は定年の引き上げの可能性もある。岡川さんは「従業員の高齢化が進み、がんを治療しながら勤務するケースも増える可能性がある。産業医の不足も懸念されるので、未病対策の健康相談や緩和ケアにも応じたい」と呼び掛ける。

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