県は横浜、川崎、相模原の3政令指定市が目指している「特別自治市(特別市)構想」について否定的な見解を示したパンフレットをこのほど作成した。表紙には「えっ!独立」と大きな見出しが躍り、3政令市が県から飛び出すようなイラストに「政令市は県から独立する法制度化を目指しています」と書かれ、「独立や分断をあおっているようだ」と波紋を呼んでいる。【2024年6月1日号掲載】
黒岩祐治知事は5月13日の定例記者会見でパンフレットを制作した理由について「政令市とけんかしている状態にしたくない。県として積極的な意見表明はしてこなかったが、アクションを起こさないと、特別自治市構想を誤解される可能性がある。県の考え方をわかってもらえるようにつくった」と説明した。
特別自治市は、広域自治体(都道府県)から基礎自治体(市町村)に権限や財政を移譲し、いわゆる二重行政の解消を目指す制度。3政令市は法制度化を目指しているが、市によって「温度差」がある。
相模原市の本村賢太郎市長は5月22日の定例記者会見で特別自治市構想について「新たな地方自治を見直す時代がきたと思っている。法制度化には賛成するが、相模原市が特別自治市になる必要はないと思っている」と考えを示した。「法制度化により選択肢をつくりたい。その中で、特別自治市になりたい市は手をあげればよい。(相模原市が)特別自治市になりたいとは1度も言ったことはない」と述べた。
本村市長は「政令市に移行して15年目、横浜市や川崎市と比べ歴史が浅い。中山間地域や水源地域における県の役割があり、(相模原市が)特別自治市になるのは厳しいと思っている。ただし今後、議論をして機運が醸成されたら、市議会や市民に問うて判断していきたい」話し、法制度化により選択肢をつくることは賛成だが、現代時点で特別自治市になる必要はないと繰り返した。
一方、川崎市の福田紀彦市長は、立憲民主党の県内3政令市の同党市議がことし3月、「同党政令指定都市政策連絡会」を設立した際、「特別自治市制度の実現に向けて」と題した基調講演を行っている。
福田市長は「全国20政令市で、全国人口の20%を占めている。1956(昭和31)の制度創設時は全国5市だった。制度創設時と現在では、社会経済状況などが大きく異なっており、大胆な制度改革が必要。そのためにも特別市のムーブメントを起こしていく必要がある」として積極的な姿勢をみせている。
これまで法制化に慎重的だった県が制作したパンフレットには、「特別自治市構想は、政令市が県から独立し、県を分断するもの」と強い表現で書かれている。
問題点としてコロナ禍などの危機事象や、広域犯罪など警察事務への影響を指摘。「県の役割・権限が及ばなくなるため、市域をまたいだ広域的な対応力が弱まる」と説明。また政令市が抜けることで「県に巨額の財政不足」が生じ、道路整備や河川改修が困難になるなどの問題点をあげている。
パンフレットはA4判で4ページ。約6千部を作成して県庁などで配布、県のホームページにも掲載している。