【相模原・座間】地裁相模原支部の合議制裁判と労働審判実施へ/シンポで課題や方策語る


相模原市と座間市を管轄する横浜地方裁判所(地裁)相模原支部(相模原市中央区富士見6)での合議制裁判と労働審判の実施を目指す、両市市長や県弁護士会、地域団体など計47団体で構成する協議会のシンポジウムが4日、座間市のハーモニーホール座間で開かれた。行政、経済団体、士業、地域住民など、それぞれの立場で合議制などの実現に向けた課題や方策を提言した。2025年12月までに実現したい考え。【2024年7月10日号掲載】

両市から行政・経済・地域団体などが参加したパネルディスカッション

両市から行政・経済・地域団体などが参加したパネルディスカッション



□早期実現へ方策語る

協議会会長の佐藤弥斗座間市長は、冒頭のあいさつで「パネルディスカッションを通してこの制度の理解を深めてほしい。市民のニーズなどをしっかりキャッチして、(裁判制度の)形を変えていかなければならない。合議制裁判の必要性を理解していただき、機運が高まっていけば」と期待を示した。

続いて、県弁護士会の岩田武司会長は「複雑、難しい事件が裁判官1人の判断で押し切ることで不適正な判断が下される場合がある。不利益を被るのは市民や地元企業」と指摘しながら「一日も早い合議制裁判の実現を目指していきたい」と誓った。

ディスカッションには佐藤市長、杉岡芳樹会頭(相模原商工会議所)、竹田幹夫会長(相模原市自治会連合会会長)、湯浅一弘会長(座間市自治会連合会)、田中和亜前支部長(県司法書士会相模原支部)、齋藤守支部長(県弁護士会相模原支部)が登壇した。

佐藤市長は、協議会設立前の要望活動について「裁判所が(行政などから)干渉を受けない独立した組織であることや、裁判官一人ひとりの職権が独立しているためか対応が厳しい」とするが、設立後は「わずかだが、開示を求めていた情報を出すようになった」と明かした。これに齋藤支部長は「設立前までは開示請求をしても数年放置されたが、回答が早くなり、中身は若干ではあるが具体的になった」と着実な進展がある旨を補足した。

地域の経済団体として杉岡会頭は「時間距離な制約があり、経済的な損失になる。合議制や労働審判が導入されていないことで横浜に行かなければならず、不合理と感じている」と切実な問題を語った。

相模原自治連の竹田会長は「(署名活動について)市民がどう思っているのかは重要なインパクトがある」とし、座間の湯浅会長も「裁判は一般市民に馴染みがないものなので、自治会を通して認知を深めてもらう必要がある」と訴えた。

□なぜ合議制が必要?

合議制は、1人の裁判官が審理する単独制に対し、3人の裁判官の協議によって事件を審理する体制をとる裁判。殺人・放火のなどの重大な刑事事件、被害者の身柄を拘束する勾留決定に対する不服申立の審理などが行われる。医療過誤事件や建築紛争のような、争点が複雑で判断の難しい民事事件も扱う。

裁判所の支部は全国に203支部あるが、この中で合議制裁判が実施されているのは63支部。全国の政令指定都市20市にある支部、県内4支部(川崎、小田原、横須賀、相模原)で唯一、合議制裁判を行っていない。

同支部が新たに受理した民事訴訟は1年間で595件あり、全国の支部で14番目の多さ。

受審には横浜市中区の地裁本庁で行わなければならず、出廷を希望する当事者が出廷できないなど、移動に伴う時間的、金銭的な制約から司法の救済を断念する場合がある。市民が合議制による審理を受けられない不利益や、処理に伴う遅れによる不当な身体的拘束の長期化など不利益が生じているとする。

年度内には1万筆を集め、25年2月の最高裁訪問に際し持参したい考え。今後は合議制や労働審判の実施に向け、フェイスブックとXなどSNSでの周知活動を進める。

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