【相模原・町田などの経営者ら】井戸整備、地域企業に波及へ/災害時の用水確保考える「井戸端会議」開く


「防災時協力井戸」に関心のある相模原と町田の両市などから経営者が集まり6月30日、災害時に自分たちに何ができるのか考える「井戸端会議」が東京ガスライフバル町田(町田市中町)で開かれた。きっかけは同社を運営する東京ガスライフバル澤井がことし5月、同社敷地内に手押し式の防災時協力井戸を掘削整備したこと。相模原市内に2本の防災時協力井戸を掘削したマンション管理のウイッツコミュニティを運営するウイッツグループホールディングス(HD)の柴田正隆社長が呼び掛け行われた。【2024年7月10日号掲載】

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町田商工会議所会頭でもある澤井宏行社長は「(井戸掘削は)ウイッツさんの影響。いつか自社でもと思っていたところ、ことし元日に能登半島地震が発災した。私たちはライフラインが寸断された際、ガスを復旧させるという社会的使命を帯びている。まず災害時、復旧作業にあたる社員を支えるために井戸や備蓄米などを備えている。そして地域の方々にも災害用井戸の存在を知ってもらい、いざという時にトイレなどの生活用水として使っていただく」と井戸設置の理由を説明した。

また、澤井社長は東京都が提唱する「在宅避難」について説明。これは倒壊などの危険がなければ、避難所ではなく自宅で生活を送る方法。このためには、食料品や生活用品などの日常備蓄が大切だとされている。澤井社長は「特に水が重要。今後は蓄電池も備え、災害時、地域を支える拠点となる」と思いを述べた。

井戸は停電時でも対応できるよう手押し式のポンプを設置。汲み上げられた水は飲料水には適さないが、トイレ排水や風呂などの生活用水として利用を想定し、災害時に近隣住民へ提供する。

上下水道は災害時、電気やガスなどに比べて復旧に時間が掛かるとされる。能登半島地震では、大きな被害をうけた石川県の輪島市、珠洲(すず)市で「断水がほぼ解消」と発表されたのは5月末。復旧に5カ月間を余儀なくされた。最も深刻なのは半島北部の珠洲市で土砂災害による二次災害の恐れがある沿岸部の一部は復旧困難と判断されている。

同社の井戸は町田市の災害時協力井戸に登録され、市が2年に1回程度、水質検査基を行い、井戸の所在を示すポールが設置された。人口約43万人の同市で防災時協力井戸は約260カ所。

一方で、人口72万人の相模原市の災害協力井戸は69カ所。同市はことし6月の市議会定例会議に、補正予算の防災関連経費として、市内69カ所の災害時協力井戸の水量調査を含めた約8000万円を計上。これは能登半島地震の教訓や派遣職員からの聞き取りなどから同市に必要な防災対策を行うとしている。

同市の本村賢太郎市長は会見で「井戸水の必要性は非常に感じている」と述べたが、近隣両市では災害時協力井戸についての政策には大きな差があるのが実情だ。

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