相模原名物に新たな仲間加わる?―。創業180年を迎えた久保田酒造(相模原市緑区根小屋)は、常温で熟成させた酒かす「熟成粕(じゅくせいかす)」を原材料に使ったアイスクリーム「熟成粕ジェラート」を6月26日から販売を始めた。同社が手掛ける日本酒「相模灘」の酒かすを使用。芳醇な香りと滑らかな口当たりで、酒好きに限らず幅広い層からの人気を集めている。【2024年7月20日号掲載】
女将の久保田加奈さんは「熟成粕のおいしい食べ方を提案したい」と意気込む。
酒かすは酒の醸造の過程で、もろみを搾った後に残る固形物で、久保田酒造ではこの酒かすを廃棄せずに肥料にしていた。1年間寝かせた熟成粕として5~6年前から販売しているが、酒かすを使った加工品は同酒造初の試み。アミノ酸やビタミン類を豊富に含むとされ、漬物やかす汁といった料理や甘酒などに使う人が購入していく。
相模灘は、酒米・山田錦や美山錦で造る純米大吟醸、純米吟醸などをラインアップする。吟醸酒のフルーティーな香りはあくまでほのかに香る程度にとどめ、上品でキレのよい味わいと、旨味のバランスが際立つ日本酒に仕上げている。
誕生のきっかけは、2023年11月に開いた「酒造学校」(酒造の体験会)で出した久保田さんが熟成粕や生クリームなどから手作りしたジェラート。例年はかす汁を提供しているが、当日は暑く「アイスの方が良いのでは」と出した。参加者から「ぜったい売れる」「販売した方がいい」などと好評だった。
既存の設備では1日で製造できる量は10個に満たず、多額な設備投資や保健所の許可などが必要となる。女将のレシピを基に同区内でジェラートを製造・販売するメグジェラートの協力で商品化し、製造も委託している。配合を変えたりしながら、試行錯誤を3回繰り返した。
久保田さんは「いかに熟成粕感を出すか追及し、酒かすの分量を多くした」とし、「隠し味に味噌を加えることが、味を引き締めるコツ」と明かす。一口目には味噌のほのかな塩味を感じるが、口内で溶けると後から熟成粕の豊かな香りが広がり、その余韻が続く。
発売開始からわずか1週間程度で想定を上回る個数が売れ、製造が間に合わない状況になった。老若男女問わず幅広い層が購入し、保冷バッグを持ち込み10個などまとめ買いする人も。「酒かすの甘味うま味が気持ちよく広がるが、後味はすっきりさわやか」「酒かすが絶妙なバランス」などとSNSでも話題になっている。
アルコール分は千分の1%以下なので、「車やバイクで訪れてその場で食べても運転して帰れる」という。子供向けにメグジェラート製の「しぼりたてミルク」「苺みるく」の2つの味も扱う。熟成粕ジェラートを含め、いずれも400円(税込み)。販売は同酒造の直売所のみ(取材時点)。
今後は、梅酒を作る際に、相模灘の日本酒に付け込んだ梅を使ったジェラートも開発していることも明らかにした。