県や33市町村などで構成するリニア中央新幹線建設促進県期成同盟会(会長・黒岩祐治知事)の総会が7月22日、横浜市内で開かれ、全線の早期整備に向けた具体策の検討といった国やJR東海などへ求める決議を含む5議案を全会一致で採決した。川崎市内では大深度地下シールドトンネルの掘削、相模原市内では山岳部トンネルや神奈川県駅(仮称)本体工事が本格化するなど県内で事業が進んでいることを踏まえ、移転住民の生活再建や周辺環境への影響低減などに配慮するよう求めた。【2024年8月1日号】
来賓として出席した水野孝則JR東海副社長(リニア建設担当)は、神奈川県内工事の進ちょくについて「神奈川県駅は、県立相原高校の移転跡地において着実に工事が進む。地上からの掘削工事はほぼ完了し、昨年10月から駅構造物本体の建設に着手している」と報告した上で、「橋本駅南口土地区画整理事業など関連事業と調整を図りながら、広い地域の発展につながるよう新たな拠点となる駅建設を進める」と話した。
水野副社長の説明によると、相模原市内では緑区鳥屋に計画する関東車両基地の用地取得率が8割を超え、今秋には造成工事に入る見込み。相模川橋梁では、左岸側で2基の橋脚のうち1基がすでに完成したほか、2023年11月右岸側の橋脚でも基礎部の工事を実施。藤野トンネル(約10・5㌔)と津久井トンネル(東工区=約6・3㌔、西工区=本線約2・9㌔、関東回送線トンネル約4・1㌔)において、リニアが通る本線トンネルの工事を開始している。
国やJR東海などに提出する要望書では、神奈川県駅が橋本駅南側に新設されることについて「県の産業・経済・文化の一層の発展に寄与するとともに、持続可能な県土づくりに大きく貢献する」とする。「地元自治体のまちづくりの意向や地域住民の要望を十分に反映」「ターミナル駅と同等の停車本数を確保」「(地元企業の)受注機会の拡大など地域の活性化」などに、「建設発生土の適正な処分」を加えた7項目について配慮するよう求めた。
今年度は早期建設などを図るため、情報の収集、国や他都府県の期成同盟会などとの連絡・調整、関係機関への要望・陳情などを行うことを決めた。
相模原市は「リニアと圏央道が交差する唯一の都市」と位置付けられ、日本の経済や文化などをけん引する役割が期待される。特に、橋本駅周辺地域はJR相模原駅周辺とともに広域交流拠点整備の計画区域に含まれ、小田急多摩線の延伸などとの相乗効果が生み出すことも見込まれている。
日本の〝大動脈〟である東海道新幹線は、建設から53年が経過して経年劣化への対応や東海地震など大規模災害への対策が必要。リニア中央新幹線はこのバイパスとしての機能のほか、首都圏と中部・近畿圏の人的交流が活発化することも想定される。
黒岩知事の代理で出席した橋本和也副知事は「工事の進ちょくが目に見える形となっており、地元の期待は大きく膨らんでいる。引き続き安全確保を尽くし、地域住民の生活環境の保全に十分配慮していただきたい」と訴えた。品川―名古屋間の開業に向けては「県内駅を降りたくなる駅とするため、さがみロボット産業特区に指定されていることを生かし、相模原市と連携したまちづくりに取り組む。地下30㍍の空間を生かし、エンターテイメントとして活用できないか検討し、県民の期待や機運を高めたい」と述べた。
続いて、副会長の本村賢太郎相模原市長は「開業は34年度以降と言われているので、逆転の発想でこの期間をチャンスと捉え魅力あるまちづくりを進めたい」とあいさつ。同市緑区選出の山口美津夫県議や小田貴久県議をはじめ、県内選挙区の各議会議員らも来賓として出席した。