県は、県消防学校(厚木市下津古久)の災害救助訓練場「かながわ版ディザスターシティ」(約1万5千平方㍍)に、住宅密集地の火災や土砂災害を想定した訓練ができる施設を整備したほか、救助用重機2台を導入し訓練機能を拡充。このほど本格運用を開始し、7月16日に県内の消防局・消防本部による模範訓練を交えながら機能について説明した。【2024年8月1日号掲載】
橋本和也副知事は開会式で「訓練の様子を見ていただき、実際の災害をイメージしながらこの訓練施設を活用し、どのような訓練を展開して災害対応力の強化に生かせるか検討してほしい。大規模災害に備え、訓練場を積極的に利用してもらえれば」と呼びかけた。
ディザスターシティーは、米テキサス州にある市街地の災害現場を再現した常設の訓練施設で、消防学校の設けられた同施設はその神奈川県版。さまざまな自然災害現場の再現が可能な訓練施設を設置。県は同学校の機能強化として総事業費約3億800万円(2017年度当初)を投じ、18年に全国最大規模の施設として整備された。
機能拡張事業では、近年、激甚化・多様化する状況を踏まえ、市町村消防職員・団員がより高度な災害救助技術を習得できるよう施設機能を強化した。同施設では災害現場の状況を確認するドローンや、人命探索ロボットの実証や研究での利用も想定する。事業費は約2億4500万円。
倒壊ビルや倒壊家屋内部などの狭く暗い空間を再現可能した「ガレキ救助訓練施設」では、地震や風水害などを想定し、屋内に取り残された要救助者を救助するための訓練を実演。相模原市消防局からも職員5人が参加し、ファイバースコープ(内視鏡)で倒壊した建物の状況や救出ルートを確認した後に内部に潜入して被災者を救助した。厚木市消防本部との連携で、同本部が設置した地震計で余震を警戒しながらの活動を確かめた。
このほか、住宅街や家屋密集地域の火災や救助事案に対応した訓練を行うための訓練施設、既存の浸水域対応訓練用プールを河川と見立て、河川転落者を水陸の救助部隊の連携により救助するための訓練施設などに新設・改修した。
ことし1月の能登地震の被災地に派遣されたという消防隊員は模擬訓練を見学し、「倒壊家屋に埋まってしまった救助者が多かった。倒壊した家屋は余震などでさらに崩れる恐れがあり、救助隊員が2次災害に遭う可能性もある。救助作業を円滑に行うためにも、新たな訓練施設を活用し手順や技術を熟練させたい」と話した。