【相模原・横浜・川崎】移行は3市で「温度差」/「特別市」法制化へ共同声明


相模原・横浜・川崎市の県内3政令市の市長と市議会の正副議長が5日、道府県の権限を政令市に移す「特別自治市(特別市)」の実現に向けた懇談会を川崎市役所(同市川崎区)で開き、「神奈川から新しい地方自治の形として特別市の法制化の早期実現を目指す取り組みを加速していく」と共同メッセージを出した。【2024年9月20日号掲載】

記者会見に応じる本村市長(左から3人目)と古内市議会議長(同2人目)=本紙撮影

記者会見に応じる本村市長(左から3人目)と古内市議会議長(同2人目)=本紙撮影



特別市は、広域自治体(道府県)から政令市などの基礎自治体に権限や財政を移譲し、二重行政を廃止し、市内の行政事務を大都市が担う制度。

全国20の政令市で構成する指定都市市長会(会長・久元喜造神戸市長)では、地方制度に関する重要事項を調査審議する地方制度調査会において、「特別市の法制化に向けた議論を加速すること」などを国へ求める要請文を採択している。

懇談会では、3政令市のこれまでの特別市に関する取り組み状況などを説明。正副議長も含め意見交換が行われ、共同声明を取りまとめた。

懇談会後の記者会見で、横浜市の山中竹春市長は「3政令市の市長と正副議長の9人が一堂に会して、共同メッセージを市民に発信ができたことは、大きな異議がある」と話した。

相模原市の本村賢太郎市長は「メッセージを発信して終わりではなく、国や国会議員、経済界、県民、市民に積極的に働きかけていく」とした。

3政令市は法制化を目指しているが、実際に特別市に移行するかについては、市によって温度差がある。

本村市長は「法制化に賛成し選択肢をつくっていく。その中で、移行したい自治体は特別市になっていただく。相模原市は政令市になってまだ15年。特別市になる体力が足りていない。まずはしっかりとした政令市になることを目指す」として特別市への移行には慎重な姿勢を示した。

相模原市の古内明議長も「特別市の法制度化が実現したとしても、移行するには課題が多い。市民の意見や現状を考慮しながら、市議会ではまだまだ議論が尽くされていない。現時点で特別市移行を判断するのは時期尚早。これから市をどう伸ばしていくかに重点を置きたい」と述べた。

一方、県は3政令市が法制化を目指す特別市構想に否定的な見解を示している。2024年5月には、「3政令市が県から飛び出すようなイラストに「政令市は県から独立する法制度化を目指しています」と表紙に書かれたパンフレットを制作。政令市が抜けることで県に巨額の財政不足が生じ、道路整備や河川改修が困難になるなどの問題点をあげ、「特別市構想は、政令市が県から独立し、県を分断するもの」と強い表現で書かれている。

川崎市の福田紀彦市長は「3政令市以外の県民にとって、特別市はデメリットになると誤解されている。財政制度は法整備などで調整ができる。県は特別市以外の市町村の保管・支援に一層注力ができるようになり、県民のメリットになる」と説明した。

共同メッセージでは「3市が提案している特別市制度は、新たな制度改革の提案であり、決して大都市のことだけを考えたものではない。そのことを広く市民、県民に理解いただくため、住民目線のわかりやすい発信を進めていく」としている。

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